2012/10/01

文系のための「オンラインストレージ」

最近何かと話題の「クラウドサービスであるが、
一体、何であるか解らないものも多い。何に使えるのか?
今更聞けないコンピュータ用語」の一つでもある。

正しくは「クラウド・コンピューティング」であり、
略して「クラウド」と呼んでいる。長いのは、少々呼びづらい。

そもそも、「クラウド」は、日本語では「」である。
ふむ。そんなことは解っている。なぜ、「」か?それが知りたい。

実を言うと、大した意味は無い。慣例的に、ネットワークシステムの、
ネットワークの部分を「雲」あるいは「吹き出し」の図で表すことが多く、
それが由来になっていると言われている。

個人的には、この説を信用しているが、真偽のほどは確かではない
ただ、私の記憶では、「クラウド」という言葉が出てくる前から、
ネットワークを「」の図で書いてあるのを見たことがあったように思う。

まぁ、これは言葉の問題なので大して重要では無い。
実質的に似た言葉が流行語として出てくるであろうし、
すでに、別の言葉が出てきて、消えてしまっているかもしれない。

さてさて、現在、クラウド3種類に区別できる、と言われている。
細かい意味は置いておいて、とりあえず、以下のようになっている。
  • SaaS(Software as a Service): 「サース」と発音する。ネット経由で利用するアプリ
  • PaaS(Platform as a Service): 「パーズ」と発音する。ネット経由で使用する開発基盤
  • IaaS(Infrastructure as a Service): 「イアーズ」と発音する。ネット上の仮想環境
SaaSPaaSIaaS の順に、専門性が高くなってくる。
これら3つの形態のうち、個人ユーザが直接的に関わるのは、「SaaS」であろう。
ひょっとすると、PaaSに関係する人はいるかも。

かなり前から現在の「クラウド」に相当する技術はあったハズだが、
いつの間にか、この言葉を用いるようになった。昔は違った名前だったような...。
この手の技術の専門でないので解らないが、似た話はかなり前から聞いている。

なぜ、このクラウドという言葉がこれほどまでに話題になったのか、
一言で言うと、大幅なコスト削減を実現できるからである。

従来は、ユーザが、パソコン本体、ソフト、データを管理するのが当たり前だったが、
クラウドでは、ユーザは最低限のことができる端末があれば良い。
ソフトもデータもそれらを扱う機械の本体もネットの「向こう側」に存在するのである。

特に、大規模な企業や自治体組織になると、機器類とソフトの管理が大変。
メンテナンスに膨大なコストを要するだけでなく、機器の入れ替えにもかなり苦労する
これらの苦労を考えると、クラウドというのは非常に有難い存在なのである。

クラウドでは、ソフトを一台一台にインストールする必要は無く
全てブラウザ上で利用するため、従業員によるソフトの不正使用もあり得ない
データもネットワーク上にあるので、不正な持ち出しのリスクも低減する。

実は、Gmail や Google Docs などおなじみのツールもクラウド
便利な、オンラインホームページ作成ツールクラウド
今や、あらゆるシーンで、クラウドの技術が生かされているのである。

さて、細かい話をしても仕方ないので、
今回は、SaaS の一種であるオンラインストレージについて整理してみる。

ところで、SaaSStorage as a Service とする場合もある。
その場合には、このクラウドストレージのことを指すらしい。
英語版Wikipedia では、「STaas(STorage as a Service」としている。誤植か?

実際には、PaaS/IaaSの部分が根幹を握っているので、
クラウドストレージなどとも呼ばれるが、
一般ユーザが気にすることでは無い。

さて、オンラインストレージを使いこなすことは、情報を管理する上で重要である。
最近では、自動的に同期するための専用ソフトを提供するサービスも多く、
上手く使えば、かなり効率的に作業を進めることができる

自動的に同期するための専用ソフトを利用すると、
データは、オンラインストレージだけでなく、
自分のコンピュータにもデータが存在するので安心感がある

別の場所で作業してファイルを普通に保存すると、ネット上のデータが自動更新され、
帰宅すると自宅のパソコンも最新状態に更新されている。
さらに、同期されたファイルはスマートフォンで確認し、修正もできる。

そういったことが可能になる。パソコンの故障の不安からも解放されるのである。

ただ、オンラインストレージを使えば誰でもこれらのメリットを享受できるかというと、
そういうわけでもない。データ管理の方法が未熟な人は、効率化を進めるどころか、
機密データの漏洩というトンデモナイことが起きるツールが危険な訳ではない

そのため、セキュリティの面から抵抗をもっている人も多いようであるが、
セキュリティ対策をしていないパソコンを使ったりUSBメモリを紛失する危険性を考えると、
似たり寄ったり、といったところであろう。結局は、知らずに使うことが一番危ない

ファイル管理の実際的な話については、いずれ、きちんとするとして、
今回は、そもそも、オンラインストレージにどような種類があって、
それぞれに、どのような特徴があるかについて考えてみることにする。

とりあえず、何かと話題のGoogle Drive から。

Google Drive は、2012年4月24日から、Google が提供し始めたサービスで、
専用ソフトを使ってファイルを操作する方法と、Webブラウザ上で操作する方法がある。
現在は、以前の Google Docs のWebページが、Google Drive のメインページとなっている。

Google の提供するサービスは複雑なので、ここではまとめて整理すると、
  • Gmail: メッセージと添付ファイル用に10 GB
  • Google Drive: 5 GBが上限。ただし、Google ドキュメント形式はノーカウント。
  • Picasa: 容量はGoogle Driveと共有2048×2048ピクセル以下の画像15分以内の動画無制限
  • Google+ : 画像と動画の既定はPicasaと同様。写真は自動的にリサイズされるので無制限
データの容量が足りなくなった場合には、追加の容量を購入できるのであるが、
上記の規約に従い、上手く使えば、容量制限を気にする事無く利用することができる。
(2012年10月1日 11:26 現在)

特に、Google ドキュメントのデータが無制限で使えることは有り難い。
Web上で、どこからもアクセスして編集できるため、OSに依存しな環境で作業できる
さらに、専用の自動同期のソフトもあり、アップロードの手間を考える必要もない。

さらに、Google ドキュメントは、自分でマクロを作成して組み込むことができるため、
分析用データのクリーング作業の自動化文献目録の整理などにも向いている。
環境に依存せずに非常に高度な機能無償で使えるのが最大の魅力である。

しかしながら、Google Drive には、注意するべき問題がある。
様々な憶測を呼んでいる「Google 利用規約」の一節である。

"本サービスにユーザーがコンテンツをアップロードまたはその他の方法により提供すると、ユーザーは Google(および Google と協働する第三者)に対して、そのコンテンツについて、使用、ホスト、保存、複製、変更、派生物の作成(たとえば、Google が行う翻訳、変換、または、ユーザーのコンテンツが本サービスにおいてよりよく機能するような変更により生じる派生物などの作成)、公衆)送信、出版、公演、上映、(公開)表示、および配布を行うための全世界的なライセンスを付与することになります。このライセンスでユーザーが付与する権利は、本サービスの運営、プロモーション、改善、および、新しいサービスの開発に目的が限定されます。"

この条項は、Google Drive の利用規定ではなく、Google のサービス全体に係る
Google がユーザのデータを勝手に使う可能性があるのでは?
という疑惑がちょっとした話題になっている。これは、少々、気味が悪い話である。

解釈が難しいので、実際には、議論が大きく分かれている。

これを大丈夫とする考え方危険であるという考え方
公開設定をプライバシーにしておけば大丈夫など、色々な意見が出回っている。
いずれにせよ、秘匿情報はGoogle Drive で管理しない方が無難だと思われる。

また、「オープン性」という点では、Googleのサービス全体的に「閉じられて」いて、
気づかぬままに、Google利用規約を破っていることもある。
あくまで、個人利用の範囲内において、自由が許されているのである。

さて、Google Drive 以外にも、オンラインストレージは色々と存在する。
二つ目は、Microsoft が提供するクラウドストレージSkyDrive
無料で使えるのは7GBまでで、容量の追加購入ができる。

このサービスは、2008年5月22日から世界62カ国で利用が開始されたサービスで、
2010年6月7には、Offie Web Apps というWeb版 Office のサポートを始め、
これにより、Office ファイルをどこからでも閲覧、修正できるようになった

なお、Google のように知らない間に、ライセンスが付与されることはなく、
Microsoft としては、コンテンツはユーザのものであると主張しているため、
ユーザの共有設定ミスが無い限りは、信頼できる。

ただし、このサービスにも、不便な点はある。

まず、Google Drive と同様に、Webブラウザ専用の同期ソフトの両方を利用できるが、
Linux 用の専用ソフトは存在していないため、
Linuxユーザには、少々、使い勝手が悪い

Offie Web Appsに関しては、OpenOffice の形式にも対応している一方で、
マクロが組み込まれているファイルをアップロードすると、マクロが取り除かれ
また、マクロ付きのオフィスドキュメントを作ることもできない

知名度の高いオンラインストレージと言えば、
DropBox というのもある。無料で使えるのは2GB であるが、
ボーナス特典で3GBまで容量を増やすことができる

また、友人を紹介し続けると、最大で20GBまで無料で使える容量がUPする。
私は数年ほど使っているが、現在4GBほど容量がUPしている。

DropBox は、WindowsMacLinux版のそれぞれについて、
専用ソフトを提供していて、複数のOS を使っている人にとっては、
最も使い勝手の良いオンラインストレージである。

ただし、Google DriveSkyDrive のように、
ドキュメントを直接編集できるわけではないので、
あくまで、コンピュータ間のファイル共有が前提となる。

これら3つのオンラインストレージが比較的有名なものであるが、
容量の大きさで言えば、Nドライブというオンラインストレージがある。
無料で使える容量30GB まで。かなりの大容量である。

容量の大きさということであれば、KINGSOFTKドライブ や、
Yahooボックスというのもある。両方とも、最大で50GBまで無償で利用できる。

iPhoneAndroid などのスマートフォンとの連携であれば、
SugarSync も有名。これは無料容量は5GBまで。
上手く使えば、十分な容量かもしれない。

Ubuntu ユーザであれば、Ubuntu One も候補になるかもしれないが、
残念ながらMac 版の専用ソフトが無いので、Mac ユーザには少々不便。
逆に、Apple が提供するiCloud は、Ubuntu との同期が困難である。

さてさて、ここまで、色々とオンラインストレージが出てくると、
どれを使うべきか、迷ってしまうわけでが、
それを上手く統合するためのサービスも存在する。

otixoというサービスは、それ自身がオンラインストレージであるが、
複数のオンラインストレージを、一つの画面で管理できる。
オンラインストレージ間のデータを移動するには便利である。

ただし、ひと月に利用できるデータ通信量が250MBまでなので、
もの足りない人は、有料版を購入しなければならない。

まぁ、こういったツールを上手く使うのも良いが、
やはり、オンラインストレージ毎に「用途」を使い分けるのが良い。
私の場合は、以下のように使い分けている。
  • Google Drive:分析の中途データおよび共有が前提のファイル類
  • SkyDrivePDF形式の論文講義資料など基本的にWindows上で動かすデータ。
  • DropBox:現在進行中の研究資料、見られても大丈夫な事務所類など。
  • NDriveiPhoneiPad写真、動画、音声ファイル等。
  • iCloudiPhoneiPadの設定情報、住所録カレンダー
  • SugarSynciPhoneiPadからアップロードしたい雑多なデータ
さて、どのように、使い分けるかは、その人それぞれであるが、
共有がもっともしやすいDropBox に頻繁に読み書きするファイルを入れておき、
その他のオンラインストレージは時々、参照したいファイルを置いている。

最初から用途を限定し、フォルダ管理をきちんとしておけば、
複数のオンラインストレージを併用していても不便は感じないし、
どこに入れたかを忘れるようなこともない。

なお、普段使わないデータに関しては、
研究室と自宅の「ちょっと良いハードディスク」に保存してあって、
定期的にバックアップしている。

最初にも述べたが、オンラインストレージを使う際には、
いくつか気をつけておくべきことがある。

まず、見られて困るようなデータ類は無闇にオンラインストレージに入れないこと。
オンラインストレージは便利ではあるが、物理的にどこに保存されているか不明で、
海外のサーバに保存されている場合には、法的には当該国の法が適用される。

Google のように、解釈が困難な、何らかのライセンスを付している場合もあり、
共有するべきで無いデータや、プライバシーに関わるデータに関しては、
オンラインストレージに保存するべきではない。

ユーザの設定ミスで、まちがって、共有設定にしてしまい、
Google検索で検索されてしまうという可能性も存在し得る。
実際に、そういった事件が稀に起きている。

また、サービスを提供しているサーバそのものが攻撃に合い、
その結果としてデータが流出する可能性も否定できない。
そういった危険性が背後に潜んでいることも考慮しなければならない

とは言うものの、外付けハードディスク、内蔵のハードディスク
あるいは、USBメモリが安全か、と言われるとそういうわけでもない。

入試問題を入れたUSBメモリを紛失したという事件や、
社内の極秘情報を入れたハードディスクを電車に置き忘れたという事件もあった。

また、ファイル共有ソフトを介してウイルスに感染し
その結果、顧客情報や取引先情報が全て外に漏れたという事件もあった。

結局のところ、内蔵ストレージと外付けストレージオンラインストレージ
どれも危険性という点ではほとんど変わらない

結局、安全なデータの保存環境は、完全にネットワークから隔離され、
外部ストレージを差すことができず、利用者が特定少数であり、
さらに、故障が起きにくく、起きても過去の状態に復旧可能なストレージなのである。

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