地理情報システム(GIS: Geographic Information Syste)あるいは、
地理空間情報システム(GIS: Geospatial Information System)と呼ぶ。
略称を使うとどちらも同じで、略称でGISと呼ばれているものがある。
教科書的な定義では、「地理空間情報を取得、保存、統合、管理、分析、
伝達して、空間的意思決定を支援するコンピュータベースの技術」である。
(村山裕司・柴崎亮介(騙)(2008). 『シリーズGIS第一巻 GISの理論』, 朝倉書店.)
おそらく、このGISというのが一体どのようなシステムなのか、
今となっては、当たり前すぎる技術となっていて、
明確な定義をすること自体が困難なものとなっている。
良い言い方ではないけれど「高度な電子地図システム」としておく。
実を言うと、このGISの歴史を述べるのは少々厄介で、
学界、政界、財界、のそれぞれの視点という思惑によって、
その起源は異なったコンテキストで語られている。
今では、GISのたとえ話で頻繁に登場するカーナビやGoogle Mapなど、
かつては、GISとは異なるものとして扱われていたし、
一緒にすることを極端に避けようする人も少なかった…。
いやいや、語り始めると本題に入れないので、今は、この話は置いておく。
そうそう、ここで議論するべきことは、GISの歴史や定義の話ではなく、
もっと技術的な内容である。すなわち、GISのデータ管理の話で、
特に、その基礎的な設計方法について整理するのであった。
GISにおけるデータを設計する上で一番厄介な問題は、
GISが現実世界のありのままの姿に対する人の認識、
というのが基礎的な概念として必要となっている点である。
つまり、「哲学的な話」と「技術的な話」の両方が必要となってくる。
実際に、GISのデータに関わる国際標準『地理情報標準』は、
かなり抽象的な認識論に基づいていて、多くの技術者を悩ましている。
おそらく、この国際標準を理解できる素養があるのは、
高度な技術力を持つ理工系エンジニアではなく、高い教養と
観念論的な思考が可能な文系出身のエンジニアであると思う。
というのは、GISでは対象となる現実世界をコンピュータ上に
モデル化する必要があって、したがって、現実世界の捉え方
というのが、どうしても避けられない問題となってくる。
そうした捉え方の一つが「オブジェクト指向GIS(OOGIS)」であり、
『地理情報標準』という標準は、このOOGISの考え方に基づいているのだが、
まずは、この標準について、簡単に整理しておくことにする。
そもそも、先ほどから『地理情報標準』と言っているけれど、
国際的には「ISO 19100」シリーズと呼ばれていて、
国際標準化機構という機関が国際標準として策定している。
この国際標準化機構は、ISOと言う略称で知られていて、
『地理情報標準』という標準は、このOOGISの考え方に基づいているのだが、
まずは、この標準について、簡単に整理しておくことにする。
そもそも、先ほどから『地理情報標準』と言っているけれど、
国際的には「ISO 19100」シリーズと呼ばれていて、
国際標準化機構という機関が国際標準として策定している。
この国際標準化機構は、ISOと言う略称で知られていて、
生産品、製品、素材、材料、プロセスに関する規格が中心に扱われる。
有名なものに、クレジットカードの寸法やネジの規格などがある。
ISOでは、技術委員会の下で標準化が進められていて、
ISO 19100シリーズの場合は、211番目の技術委員会「ISO/TC 211」で
検討が重ねられている。
この委員会での議論の範囲は、「地球上の場所に直接的、
あるいは間接的に関連付けられた事象の情報について、
体系的な一連の標準として確立すること」である。
有名なものに、クレジットカードの寸法やネジの規格などがある。
ISOでは、技術委員会の下で標準化が進められていて、
ISO 19100シリーズの場合は、211番目の技術委員会「ISO/TC 211」で
検討が重ねられている。
この委員会での議論の範囲は、「地球上の場所に直接的、
あるいは間接的に関連付けられた事象の情報について、
体系的な一連の標準として確立すること」である。
また、具体的には、「異なるユーザーやシステム間で電子化された
データを管理、取得、加工、分析、接続、表現、伝達するための
方法論、ツール、サービスを明確化する」ことを目的としている。
何やら、難しい話に聞こえるが、要するに、地理的な情報に
関わる情報の取扱全般におよぶプロセスを整理するための
国際標準を作るのがISO/TC 211の目的となっている。
ISO/TC 211では、さらに、議論するべき内容によって、
ワーキング・グループが置かれていて、
それぞれのワーキング・グループで標準化を行っている。
- WG 1: フレームワークと参照モデル
- ISO 19101: 参照モデル
- ISO 19103: 概念スキーマ言語
- ISO 19104: 専門用語
- ISO 19105: 適合性と検証
- ISO 19121: 画像とグリッドデータ
- WG 2: 地理空間データモデルと操作(解散)
- ISO 19107: 空間スキーマ
- ISO 19108: 時間スキーマ
- ISO 19109: アプリケーション・スキーマの規則
- ISO 19123: 被覆の幾何と機能のためのスキーマ
- WG 3: 地理空間データの管理(解散)
- ISO 19110: 地物カタログの方法論
- ISO 19112: 地理識別子による空間参照
- WG 4: 地理空間サービス
- ISO 19116: 位置情報サービス
- ISO 19117: 描画法
- ISO 19118: 符号化
- ISO 19119: サービス
- ISO 19125: シンプル・フィーチャー・アクセス
- ISO 19128: Webマップ・サーバーのインタフェース
- ISO 19136: Geography Markup Language(GML)
- ISO 19142: Webフィーチャー・アクセス
- ISO 19149: 地理情報のための権利表示言語(GeoREL)
- ISO 19161: 測地系
- ISO 19164: 登録サービス
- WG 5: プロファイルと機能に関する標準(解散)
- ISO 19106: プロファイル
- WG 6: 画像
- ISO 19120: 機能的標準
- ISO 19129: 画像、グリッド、被覆の枠組み
- ISO 19130: 地理情報取得のための画像センサーのモデル
- ISO 19159: リモートセンシング・センサーのキャリブレーション
- ISO 19163: 画像とグリッドデータの内容コンポーネントと符号化規則
- WG 7: 情報の公共性
- ISO 19115: メタデータ
- ISO 19122: 人材の資格と認定
- ISO 19126: フィーチャーの概念辞書と登録
- ISO 19137: 空間スキーマのためのコア・プロファイル
- ISO 19139: メタデータの実装
- ISO 19144: 分類システム
- ISO 19150: オントロジー
- ISO 19152: 土地管理ドメイン(LADM)
- ISO 19160: 住所表記
- ISO 19165: デジタルデータとメタデータの保存
- WG 8: ロケーション・ベース・サービス(解散)
- ISO 19132: ロケーション・ベース・サービスの参照モデル
- ISO 19133: ロケーション・ベース・サービスの追跡とナビゲーション
- ISO 19134: ロケーション・ベース・サービスのマルチモーダルルーティング
- WG 9: 情報管理
- ISO 19111: 座標による空間参照
- ISO 19127: 測地系コードとパラメータ
- ISO 19131: データの製品仕様書
- ISO 19135: 項目登録のための手順
- ISO 19145: 地点の表現の登録
- ISO 19146: クロス・ドメインの語彙
- ISO 19153: 地理空間の電子的な権利管理参照モデル(GeoDRM RM)
- ISO 19156: 観察と計測
- ISO 19157: データ品質
- ISO 19158: データ提供の品質の確実性
- ISO 19162: WKTによる座標参照系の表現
- WG 10: ユビキタスと公共アクセス
- ISO 19147: 移送ノード
- ISO 19148: 線形参照
- ISO 19154: ユビキタス公共アクセス参照モデル
実際には、同じ標準を異なるワーキング・グループで議論されていたり、
審議内容が別のワーキング・グループに移管されたり、
あるいは、解散したワーキング・グループも存在するので、
ここに書かれている通りでは無い部分もある。
そういった、細かい点は置いておいても、これを見てみると解るように、
様々な内容について議論されていて、各ワーキング・グループで、
関連する標準について議論されていることがわかる。
残念ながら、私自身、全ての標準の中身を理解できている訳ではないし、
これらの標準の全てを理解できている人は、世界でも居るのか…。
ところで、本ブログでは、ISO 19100 シリーズとは呼ばずに、
『地理情報標準』という言葉を使っているが、
その理由に関しても、少し、説明しておく必要がある。
実は、国際的な標準としてはISO 19100として通用しているけれど、
日本国内に同標準を適用するには、日本にのみ関わる部分や、
日本の特有の事情で補足あるいは追加するべき点がある。
そういった部分を精査して、国内向けに別の標準が作られている。
その標準は、日本工業規格(JIS)のJIS X7100シリーズとして、
国内での普及が始まっている。
さらに、国土地理院は、JISX7100シリーズのうち、
標準の中でも実用上必要な部分を取り出して体系化し、
『地理情報標準プロファイル(JPGIS)』を策定している。
これとは別に、かつては、国土地理院と国内民間企業が共同研究として、
ISO/TC 211の議論に準拠して国内への適合を検討していた時期があって、
その成果が『地理情報標準(JSGI)』としてまとめられている。
細かい内容を見てみると、当然のことながら、それぞれに相違はあるけれど、
全体的な体系や考え方は同じなので、総称して『地理情報標準』としている。
この呼び方の方が、内容がよく解るというメリットもある。
とりあえず、『地理情報標準』については、この辺りで止めておいて、
少しずつ、同標準の考え方というか、OOGISの考え方について、
次回から、理解を進めていきたい。
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