2015/10/06

文系のための「デジタルカメラ」の設定(1)

デジタル・カメラを何気なく使っている人は多いが、
全て「おまかせモード」で撮影している人が大半である。
それでも困らないのは、最近のカメラがよく出来ているからである。

「何が写っているか?、が判れば良い」というのであれば、
デジタル・カメラの標準機能に任せてしまうのは反対しない。
迂闊なことをしてしまうよりも、はるかに綺麗な写真が取れる。

しかしながら、もう少し進んで「考えて撮る」には、少しだけ知識を要する。
そうしたちょっとした知識を持つだけで、実際には、
デジタル・カメラの活用範囲が広がり、失敗が少なくなる

ところで、最近のデジタル・カメラには、何やらダイヤルが付いている。
その中に、「P」、「A」、「S」、「M」と大きく書いてあるものがある。
電機屋の店員は、「とりあえず、Pというダイヤルで…」と言うことが多い。

もう少し、知っている人は、これらがそれぞれ…
  • P:プログラム・モード
  • A:絞り優先モード
  • S:シャッター優先モード
  • M:マニュアル・モード
を示していることを知っているかもしれない。
他にも、何かあるかもしれいが、それは置いておく。

とにかく、この四種類のモードから推測するに、
何やら、「絞り」と「シャッター速度」が重要であることが解るが、
この4つのモードのうち、文系として最も必要とされることが多い
と考えられるのが「A」の「絞り優先モード」である。

例えば、フィールドワークで風景全体を収めたい場合や、
文献資料やガラス乾板のデジタル資料化をしたいときなど、
周囲の環境光や焦点を考慮して撮影することが望まれる。

さて、このモードについて理解するためには、レンズの「焦点距離
レンズの開放「F値レンズの「画角撮影時の「絞り値
そして、被写体までの「距離である。

これらは、様々な資料を撮影する上で極めて重要な要素である。

さて、上記の要素のうち、直感的に解りにくいのがF値であるが、
その計算は、焦点距離レンズ口径によって導出することができ、
どのような指標であるかは、計算式を眺めてみると解りやすい。



ここで、F が求めるべきF値であり、
f は焦点距離、D はレンズ口径である。したがって、
F値は、レンズの光量と焦点の合う範囲の指標となる。

絞り」とは、光の量を調整するための機構で、
レンズの内で閉じたり、開いたりして、レンズ口径を調整する。
絞りを開るとレンズ口径は広がり、絞りを絞るとレンズ口径は狭まる。

ということを理解した上で、カメラのレンズの製品仕様を見てみると、
レンズ性能を知るために「開放絞り」と「最小絞り」の項目があって、
そこにもF値というのを使って表現していることが解る。

何やら、いきなりよく解らないが、もう少し落ち着いて考えてみる。

まず、分母の部分の「レンズ口径」に的を絞って考えてみると、
光を多く取り込める大きなレンズ口径ではF値が小さくなり、
その逆に、小さなレンズ口径はF値は大きくなる。

要するに、暗い場所では絞りを開いてF値を低く設定した方が良く、
明るい場所では絞りを絞ってF値は高く設定した方が良い。

次に、分子の部分に当たる「焦点距離」について考えると、
レンズから結像する場所までの距離が短いほどF値は小さく
その逆に、その距離が長いほどF値は大きくなる。

要するに、レンズ口径と焦点距離の関係から結像地点までの角度を表している。
レンズを通して入ってきた光は、厳密には焦点は一箇所でしか合わないけれども、
この角度が小さいほど、その像を結ぶ許容範囲(ボケない範囲)も広くなる

したがって、F値が大きい(焦点距離が長い)ほど、像を結ぶ範囲が深くなり、
一方、F値が小さい(焦点距離が短い)ほど、像を結ぶ範囲は浅くなるので、
奥行きのあるものは絞りを絞ってF値を高く設定した方が良い。

こうした結像範囲の深さのことを「被写界深度」と呼ぶ。

以上のことを理解した上で改めて開放絞り最小絞りを見てみると、
絞りを完全に開いた状態でのF値のことが開放絞りであり、
その逆に、絞りを絞りきった状態でのF値が最小絞りということが解る。

「F値」について、さらに、重要なこととして、F1.0の基準値では、
レンズを透過しても光の減衰が無い、と定義されていて、
円の面積に比例した数列でF値は変化する

ここで、F1.0というのは、人の目が基準となっていて、
その基準値に対する相対的な光量の減衰を問題としている。

ここで、あるレンズの面積をAnとすると、以下のことが言える。



また、円の面積計算から、レンズ口径は以下のように表現できる。



ここで面積を二倍にした場合のレンズ口径は、
以下のようにして計算できる。



つまり、面積が二倍になるようにレンズ口径を変えるということは、
入っていくる光の光量が半分になることを意味し、
そのようにレンズ口径を変えるには、√2 刻みとなることが解る。

したがって、F値の計算は以下によって求められる。



ここで、nは「EV(Exposure Value)刻み」と呼び、
露出の段階を表す値のことである。
これを実際に計算してみると以下のようになる。

EV(n) F値 面積
2.000 0.5 1809.557
1.500 0.6 1279.550
1.000 0.7 904.779
0.500 0.8 639.775
0.000 1.0 452.389
-0.500 1.2 319.888
-1.000 1.4 226.195
-1.500 1.7 159.944
-2.000 2.0 113.097
-2.500 2.4 79.972
-3.000 2.8 56.549
-3.500 3.4 39.986
-4.000 4.0 28.274
-4.500 4.8 19.993
-5.000 5.7 14.137
-5.500 6.7 9.996
-6.000 8.0 7.069
-6.500 9.5 4.998
-7.000 11.3 3.534
-7.500 13.5 2.499
-8.000 16.0 1.767
-8.500 19.0 1.250
-9.000 22.6 0.884
-9.500 26.9 0.625
-10.000 32.0 0.442
-10.500 38.1 0.312
-11.000 45.3 0.221
-11.500 53.8 0.156
-12.000 64.0 0.110

この表において、F1.0が基準となっていて、その基準から、
EVを一段下げると、F値は√2倍して大きくなっていってる。
レンズの面積は、EVが一段下がるごとに半分となっている。

つまり、カメラのレンズ性能として開放F値が2.8のレンズを
F5.7(慣例的な標記ではF5.6)にすると、光量は半分になる。

では、実践的な話としては、どのような事が問題となるのか?

例えば、デジタル・アーカイブを構築するためには、
部屋の明るさと、撮影対象の奥行きを考慮する必要がある。
その時には、計算して最もバランスの良いF値を考える必要がある。

さて、ではどのようにして、そのバランスを考えるべきか?
その計算方法については、次のテーマとして考えることにする。

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