2018/05/31

文系のための「リモートセンシングの意義」

物事を細部にわたって観察することは非常に重要なことである。
しかしながら、全体像を観察することで初めて明らかになることも多い
これは何事にも言えると思うし、多くの人は同意してくれると信じている。

では、物事の全体像を把握するためにはどうすれば良いのか?
答えは簡単である。全体が見えるまで離れれば良い
巨大な対象の場合には、さらに、遠くに離れれば良い。

「山で遭難したら山頂を目指せ」という言葉があるが、
山頂から周辺を観察することで地形を知ることができるし、
運が良ければ、近くの集落を見つけることができるかもしれない。

我々が日常的に用いている「地図」もこの発想の延長上にある。
地図は地上に存在する事象の全体像を把握するために使用される道具であり、
事象そのもの、あるいは、事象間の空間的な関係を表現する手段としても用いられる。

地図は便利である。しかし、地図制作は簡単ではないことも多い。
地上の状況を観察し、計測し、図化しながらつなげる作業は苦労を伴う。
詳細かつ高精度な地図を作ろうとすると、さらに大変である。

この問題を解決するための方法として考案されたのが「空撮」である。
空から写真を撮ることができれば、一瞬にして地上の状態を把握できるし、
場合によっては、地上からでは把握しにくい事象を発見できるかもしれない。

この発想は少なくとも19世紀にはあったようである。
記録上は1858年にがNadarという写真家がパリで行ったのが最初らしい。
H. Elsdaleという人物が軍事利用を思いついたのが契機となり実用化が進んだ。

実用化という点では考古学の取り組みは早かった。
1906年P.H. Sharpe中尉が初めてストーンヘンジを空撮した。
一枚は真上から撮影したもので、もう一枚は斜めから撮影した写真。

http://www.sarsen.org/2013/07/first-balloon-aerial-photo-of.html

単に遺跡を上空から観察しただけでない。
地下の埋蔵物の状態によって、植物の育成状況が異なることが重要な点である。
この二つの写真を見てみると、黒い楕円黒い直線が見える。

考古学ではこの現象のことをクロップマークとよぶ。
地下に石壁などが存在すると、周囲よりも土壌が薄くなるので草木はあまり伸びない
一方、硬い土壌を掘り下げた後に豊かな土壌が堆積していると草木はよく伸びる



さて、こうした技術革新や発見の延長上にあるのがリモートセンシングである。

初期は気球に乗って撮影したモノクロの空中写真から始まり、
航空機に搭載したカラーの航空写真が一般化していった。
そして、現在では人工衛星に搭載した画像を使う。

人工衛星を使用することの意義は大きくわけて二つある。
ひとつ目は、広大な範囲にわたる地上の様子を安全に知ることができることであり、
ふたつ目は、目に見えない情報を知ることができるという点である。

ひとつ目の意義については直観的に理解することができると思うが、
ふたつ目については少々難しいかもしれない。
前提知識として、デジタル画像人工衛星についても知る必要がある。

ということで、少しずつ、これらのことについて考えていきたい。

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