2018/06/01

文系のための「人工衛星」

宇宙に出るという発想は19世紀にはすでにあった。
よく知られているのはジュール・ベルヌの『月世界に行く』。
19世紀といは我々が考えている以上に現代なのかもしれない。

宇宙についての想像から現実へと向かい始めたのは第二次世界大戦の頃である。
当初は遠距離攻撃を可能とするミサイル開発が主たる目的で、
ナチス・ドイツが開発したV2ロケットは高度88〜200kmにまで達した。

宇宙と地上との境界の定義にカーマン・ラインというのがあって、
その定義によると高度100km以上が宇宙とされている。
したがって、V2ロケットは宇宙に到達した最初のロケットと言える。

宇宙から地上を観察するという発想が具現化するようになったのは、
第二次世界た戦後の、いわゆる、「冷戦」時代であり、
1957年、最初の人工衛星「スプートニク1号」がロシアによって打ち上げられた。

ロシアが人工衛星の打ち上げに成功したことは西側諸国に強いショックを与え、
その衝撃の強さから「スプートニク・ショック」という言葉が生まれ、
アメリカとロシアとの間の宇宙開発競争が激化することになっていった。

この一連の流れで設立されたのが有名なNASA(国立航空宇宙局)であり、
現在においても、有人宇宙飛行宇宙ステーション人工衛星など、
宇宙に関する様々な技術開発が進められている。

宇宙計画についてはロシアとアメリカのみならず、
欧米諸国や日本のJAXAの取り組みも非常に興味深いのであるが、
その辺りの話は置いておいて、人工衛星に焦点をあてることにする。

ところで、「人工衛星」というのは奇妙な言葉である。
人工」の「衛生」というのはどのような意味なのか?
少なくとも、私は初めてこの言葉を聞いたときに色々と不思議に思った。

そもそも、宇宙に存在する物体のことを「天体」とよび、
特に惑星などの周りを公転する天体のことを「衛星」とよぶ。
ちなみに、「惑星」は「恒星」という天体の周囲を公転する天体である。

面白いことに天体には人によって作られたものも含まれ、
それらを総称して「人工天体」と呼ぶらしい。
つまり、人工衛星とは衛星としての機能をもった人工天体ということになる。

衛星には「軌道」というものがある。
ある物体が別の物体との力学的な均衡作用によって、
その周囲を回転する際の経路のことである。

人工衛星の場合にはこの経路を計算し、意図的に軌道に乗せているのである。

軌道は衛星の速度と地球の重力の関係によって成り立つため、
軌道上の速度は高度によって規定され、
逆に、軌道の高度は速度によって規定される。

かなり、ざっくりとした説明をすると、
地球から宇宙に向かって飛び出そうとする人工衛星の速度と、
地球が重力によって引きつけようとする力の均衡を利用する。

速度が十分に早くないと地球の重力に負けて墜落してしまうので、
地球の重力に負けない程度の速度が必要となる。
一方、速度が早すぎると周回軌道から外に外れてしまう。

このとき、墜落せずに地表面スレスレで飛ぶことができる速度は7.9km/sであり、
地球の軌道を外れて太陽系へと飛び出してしまう速度は11.2km/sである。
この二つの速度は、それぞれ、「第一宇宙速度」と「第二宇宙速度」とよばれる。

ちなみに、「第三宇宙速度」は太陽系から出るための速度。

さて、地球の自転周期と同じ24時間で地球を一周する軌道は高度約35,786kmであり、
この高度の軌道よりも内側では地球の自転よりも早く
この高度の軌道よりも外側では地球の自転よりも遅くなる。

人工衛星がとることができる軌道そのものについても知っておく必要がある。
原則として、軌道の中心は必ず地球の中心を通り、
特に、赤道を高度35,786kmで周回する人工衛星静止衛星とよばれる



人工衛星が描くことのできる軌道は大きく分けて三つある。

すなわち、地表からの高度が一定である円軌道
軌道上の位置によって高度が変化する楕円軌道
特定の地域の上空に長時間とどまることができる準天頂軌道である。

準天頂軌道は静止衛星の軌道を斜めに傾けることによって得られる軌道であり、
その軌道を地図上に布置すると「8の字」を描く。
日本の人工衛星「みちびき」の軌道に代表される。

詳細についてはJAXAのホームページを参照するとよい。

さて、ここまでの話で人工衛星そのものについてはある程度理解できたと思う。
しかしながら、人工衛星の目的と役割は非常に多岐にわたる。
そこで、次回は人工衛星の目的と役割について焦点を充てて色々と考えてみたい。

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