2018/06/03

文系のための「気象・地球観測衛星」

人工衛星が飛ぶ仕組みというのは物理的な原理に基づくが、
人工衛星を打ち上げる目的というのは色々とある。
したがって、人工衛星といっても様々な種類があってひと括りにはできない。

人工衛星の種類は様々な観点から分類できるが、
JAXAのホームページを見てみると、
以下のように分けられている。

  • 技術開発・試験衛星 
  • 科学衛星
  • 通信・放送衛星
  • 気象・地球観測衛星
  • 測位衛星
  • 宇宙実験衛星

これらの人工衛星の中で地理学分野で特に重要となるのが、
気象・地球観測衛星測位衛星の二つであり、
リモートセンシングでは気象・地球観測衛星にお世話になることが多い。

ちなみに、測位衛星というのはGPSに代表される位置情報を取得するための人工衛星。

ということで、今回は気象・地球観測衛星について整理することにする。
この種の人工衛星はその名の通り、地球の状態を観測するための人工衛星であるが、
知っておくべきことは、搭載されている光学センサーについてである。

光学センサーとは光の性質を利用して物体の性質を知るためのセンサーである。
馴染みがないようにも聞こえるかもしれないが、
デジタルカメラに搭載されているCCDCMOSも光学センサーの一種である。

ところで、なぜ、人は物体の「」を見分けることができるのだろうか?
おそらく、これも中学校の理科の時間に学んだはずであるが、
覚えていない人もいるかもしれない。まずは、そこから話を整理する。

よく晴れた日の正午に真南に向かい、空に向かって顔を上げていくと何がみえるか?
おそらく、太陽が輝いているのが見えるはず。では、どのように見えるだろうか?
太陽からは様々な種類の光が放たれていて、それらが集まって白く輝いて見える

太陽から飛来した白い光は様々な物体に衝突し、
ある光の成分はその物質に吸収され、ある光の成分は反射される。
こうして、元は白かった光が分解されて色が付いているように見える

例えば、植物が緑色に見えるということは、
植物が青色や赤色の成分を吸収し、緑色の光のみを反射しているからである。
ちなみに、黒く見える物体は全ての光を吸収していることになる。

我々の目はそうしたある光源から放たれた光が物体に反射した光を感じとり、
様々な物体の色を認識しているのである。我々の目は光学センサーそのものである。
このようにして人の目によって認識される光は「可視光線」とよばれる。

さて、一般的に「」という言葉を聞くと、
可視光線しかないようにも聞こえるが、
実は、人の目に見えない光もある。

代表的なものはテレビのリモコンなどに使われている赤外線や、
日焼けの原因となる紫外線などがある。
これらは人の目には見えない光である。



一般的にデジタルカメラに搭載されている光学センサーは可視領域に対応している。
もう少し厳密には、可視領域の光のみを記録するようになっている。
それに対して気象・地球観測衛星には不可視な光も感知できるようになっている。

例えば、地球観測衛星Landsat 8OLIというセンサーの場合は次のようになっている。

  • バンド1:430-450nm(短波青色光)
  • バンド2:450-510nm (青色光)
  • バンド3:530-590nm(緑色光)
  • バンド4:640-670nm(赤色光)
  • バンド5:850-880nm(近赤外光)
  • バンド6:1,570-1,650nm(短波長赤外光)
  • バンド7:2,110-2,290nm(短波長赤外光)
  • バンド9:1,360-1,380nm(短波長赤外光)
バンドというのは電磁波の周波数帯を特定の範囲で切り出した帯域のことで、
Landsat 8OLIセンサーの場合、可視領域はバンド2〜4の範囲でカバーされ、
この三つのバンドを組み合わすと、航空写真のような画像が得られる。

バンド5〜7、9は人の目には見えない赤外域をカバーし、
バンド1は可視領域の青色光よりも短い波長域をカバーする。
これらのバンドを組み合わすことで人の目では見えない状態を観察できる。

なお、バンド8パンクロマチックバンドといって、
概ね、可視領域をカバーする高解像度のモノクロ画像である。
このバンドの使い方についてはいずれ、説明しようと思う。

さて、気象・地球観測衛星は異なる帯域の光の情報を取得することができるが、
複数の帯域によって光の情報を取得するとどのような利点があるのだろうか?
実は、物質によって光の反射あるいは帯域ごとの放射特性が異なるのである。


例えば、植物の場合、光合成を行うために光をエネルギーに使う。
特に、植物にとっては赤色光がエネルギーの源になる。
しかし、近赤外光の帯域になると植物を傷付けるために反射する。

したがって、光合成が活発に行われているほど赤色光は植物に吸収され、
逆に、近赤外光が反射される。その反射された光を人工衛星で捉えるのである。
同様に、水域、土壌、雪など、それぞれの物質は異なる反射特性をもつ

この辺りの話は実践的な段階でもういちど説明しようと思うが、
とりあえずは、ここでは気象・地球観測衛星の役割と、
その仕組みをなんとなく理解できていれば良いように思う。

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