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2012/08/22

文系のための「二変数の関係」(1)

前回の話では、以下のことについて説明した。
偏差」は、平均からの離れ具合であり、個々の個性を表した
分散」は、偏差の二乗の和であり、全体として個性の強さ、バラツキを表した
そして、「標準偏差」は、分散の平方根をとったものであった。

ふむ。ようやく、データを観察する上での第一段階はクリア。
では、異なる変数(属性)同士の関係を観察するには、どうすれば良いか?
まずは、前回のデータの読み込みから。前回と同じ作業。

# Windows と Linux の人は次のコマンド
X <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は次のコマンド
X <- read.table(pipe("pbpaste") , sep=",", header=TRUE)

以下が、そのデータ。前回のものを再掲しただけ。

データの説明に関しては、平均の話を参照。

Oroshi_Kg, Taka, Naka, Yasu
Tai, 1336, 3150, 1217, 53
Chinu, 226, 630, 513, 105
Sawara, 212, 1575, 1259, 840
Yazu, 4834, 840, 315, 179
Suzuki, 618, 1575, 1146, 525
Akou, 21, 4725, 3129, 1575
Kochi, 28, 2100, 874, 210
Okoze, 28, 5250, 2635, 210
Ainame, 29, 3150, 621, 315
Hage, 1205, 1890, 383, 210
Konoshiro, 21, 2100, 1100, 105
Sayori, 12, 5250, 3916, 1260
Anago, 1637, 2625, 1721, 630
Mebaru, 330, 4200, 1680, 315
Tachiuo, 1211, 2310, 930, 105
Hamo, 1622, 3938, 592, 53
Karei, 41, 6300, 3178, 525
Hirame, 540, 2100, 1496, 210
Aji, 5149, 3150, 789, 210
Saba, 5413, 3675, 625, 53
Ika, 2414, 2888, 1083, 105
Tako, 1844, 1890, 1180, 525
Ebi, 560, 7350, 1420, 525
KurumaEbi, 222, 8925, 6508, 2625
Koiwashi, 1316, 1155, 617, 328
ObaIwashi, 2716, 499, 267, 175
Mentai, 678, 1155, 859, 394
Hamachi, 4772, 998, 632, 105
Isaki, 268, 2625, 1465, 840

現在、Xという行列の変数に、「魚の卸売価格」の情報が入っている。
このデータを使って、各変数間の関係を観察していくことにする。
さて、ある変数と別の変数との関係とは何か?
そもそも、二つの変数の間に、関係が「ある」のか?、「ない」のか?

もしも、関係があるとしたら、何らかの法則があるはず。
直感的に、考え得る法則は、二つある。
一つ目は、一方の値が高いときに、もう一方も高いという法則(連動)、
二つ目は、一方の値が高いときに、もう一方は低いという法則(反連動)。

どうすれば、この状況が理解できるか、少し考えてみる。

まずは、連動している場合を考えてみる。どのような状況であるか?
一方の値が「」に向いているとき、もう一方は「」に向く。
一方の値が「」に向いているとき、もう一方は「-」に向く

ここで、小学校で習ったことを、思い出してみる。
「+」 × 「+」 = 「+」 であり 「-」×「-」 =「+」 また 「+」 × 「-」 = 「-」 
という、あの法則。確か、そのようなことを教わった。

連動の場合、ある対象における二つの変数をかけ合わせると、
 その結果は、「+」方向に大きくなるし、
反連動の場合、ある対象における二つの変数をかけ合わせると、
 その結果は、「-」方向に大きくなる。
いずれでもない場合、「+」と「-」が打ち消し合って、「0」に近づく

では、実際に、どのように計算するのかを整理する。
二つの変数、「」と「」があったとして、次のように考えることができる。



この計算結果の「正負の符号」を見れば、上の法則のいずれかが解る。

ところで、この式を観察してみる。
なんと、分散の式のΣの計算の部分と似ている。

もしも、 であれば、二乗となるので、この部分は分散と同じ。
したがって、分散の式に合わせて、次のように考えることもできる。



二つの変数の「バラツキ」を同時に見ているので、これを「共分散」と呼ぶ。
とにかく、この指標の「」と「」の大きさを観察すれば、
二つの変数間の全体として関係が解りそう。では、実際の計算を。

そうそう、行列Xと同じサイズの、平均が並んでいる行列が必要なのだった。
これは、前回にもやったので、説明は省く。処理の内容だけ。

# ステップ1:データの総数(n)を求める。
n <- nrow(X)
# ステップ2:卸売数量の平均を求める。転置が必要。
m <- t(colMeans(X))
# ステップ3:行列の引き算ができるように、平均値を総数個複製する。
M <- matrix(rep(m, each=n), nrow=n, ncol=4)
# ステップ4:元の行列から、平均値が複製された行列Mを引き算する。
A <- X-M

とりあえず、これで準備完了。気を取り直して、計算してみる。
全組み合わせは大変。今回は、卸売数量と高値の関係に注目してみる。
この二つの共分散を求める方法は以下の通り。ベクトルの掛け算

(A$Oroshi_Kg %*% A$Taka)/(n-1)

そして、その結果。

> (A$Oroshi_Kg %*% A$Taka)/(n-1)
         [,1]
[1,] -1026368

ふむ。マイナスの結果が出てきた。反連動の関係のようだ。
っで、これは、大きいのか?それとも、小さいのか?
場合によっては、実は、反連動とは言えないかも。判断に困る。

可視化してみると、状況が解るかもしれない。
とりあえず、元の行列Xで確認してみる。
plot(X$Oroshi_Kg,X$Taka)

これを「散布図」と呼ぶ。横軸が卸売数量で、縦軸が高値。
共分散によって表される状況を可視化したものと言える。

さて、結果は...というと、何とも、微妙な...。
なんとなく、右肩下がりになっているような...。
とにかく、コメントしにくい結果である。正直言って、解釈に困る。

反連動と言えなくはない。が、やはり、その程度は不明。
そこで、この結果を、なんとか一般的にわかりやすいようにしたい。
どのようにすれば、良いか。考えてみる。

要するに、この問題は、共分散の上限と下限が決まっていないのが問題
したがって、上限と下限が、固定されれば問題は解決できそうである。

わかりやすいように、偏差の値が、「-1〜1」の間に収まるようにすれば良いか。
つまり、何かの単位で揃えるということか。うん?単位にする?
単位にするということは、何かの逆数を掛ければ良かった。

では、二つの変数の共分散を考えた時、
正の方向に値が最も大きくなるのはどような状況か?

ここで、直感的に分かった人はセンスが良い。実は、二つの変数が同じ状況
この状況は、分散と呼ばれる状況であった。では、分散で単位化すれば良いか?

それはでは「ダメ」!分散は、元の値よりも二乗分値が大きいのであった。
では?何で単位を揃えるべきか。そうそう。思い出した。
平方根をとって元と比較したもの。「標準偏差」を使おう

まずは、標準偏差を求めたい。これも復習。sd()関数を使う。
今回は、結果を変数に入れておく。カッコで括っているのは、結果を表示させるため。

(X.sd.o <- sd(X$Oroshi_Kg))
(X.sd.t <- sd(X$Taka)) (X.sd.n <-  sd(X$Naka)) (X.sd.y <- sd(X$Yasu))

実行結果は、以下のようになる。

> (X.sd.o <- sd(X$Oroshi_Kg))
[1] 1677.734
> (X.sd.t <- sd(X$Taka))
[1] 2052.045
> (X.sd.n <-  sd(X$Naka))
[1] 1323.899
> (X.sd.y <- sd(X$Yasu))
[1] 553.1923


次に、行列Aを作成した時の「ステップ3」を応用して、
行列Xと同じサイズの標準偏差が入った行列を作成する。今回、結果は省略。

(S <- matrix(rep(c(X.sd.o, X.sd.t, X.sd.n, X.sd.y), each=n), nrow=n, ncol=4))

次に、偏差が入っている行列、すなわち行列Aを標準偏差基準化する。

行列の「成分の割り算」であって、行列そのものの計算ではない。
間違っても、逆行列と混同してはいけない

Z <- A/S

さて、ちゃんと基準化されているかを確認してみる。
各変数における分散が1となっていれば良いはず。

var((A/S)$Oroshi_Kg)
var((A/S)$Taka)
var((A/S)$Naka)
var((A/S)$Yasu)

実行結果は以下のようになる。確かに、上手くできている。

> var((A/S)$Oroshi_Kg)
[1] 1
> var((A/S)$Taka)
[1] 1
> var((A/S)$Naka)
[1] 1
> var((A/S)$Yasu)
[1] 1


ついでに、この時の平均についても確認しておく。平均は全て「0」

colMeans((A/S))

そして、その実行結果。結果は、微細な計算誤差があるが限りなく「0」。
結局、上限が1となるように、上限と下限を圧縮しているので、
ちょうど、真ん中となる平均は、基準化する前と変わらず「0」のまま

> colMeans((A/S))
    Oroshi_Kg          Taka          Naka          Yasu 
-3.840319e-17  1.007336e-16 -6.346695e-17  1.339924e-17 

以上の結果から、このように基準化を行うと、分散が1、平均が0となる。
このような基準化の方法を「標準化」と呼び、標準化された値を「Z値」と呼ぶ。
なお、標準化の英語は「scale」と呼ぶ。Rには、scale()関数がある。

かなり、面倒な手続きを踏んだが、以下のようにすれば、
元の行列Xから、簡単に標準化された行列を算出できる。

Z <- scale(X)

ここで、標準化の式も示しておく。以下の値は、個々の成分に作用する。



左から順に。左端は、「i」番目の変数「x」の「z」値という意味。
真ん中のは、「i」番目の変数「x」における実際の計算の式。
右端は、象徴的な式。ある変数xから平均を引いて、
標準偏差で基準化している状況を表している。

では、標準化されたデータを用いて共分散を計算してみる。
共分散は、ベクトルの掛け算で計算できた。解は、-1 〜 1 の間に収まるはず。

(Z$Oroshi_Kg %*% Z$Taka)/(n-1)

そして、その結果。

> (Z$Oroshi_Kg %*% Z$Taka)/(n-1)
           [,1]
[1,] -0.2981213

ふむ。この結果を見てみると、負の値となっているが、それほど大きくない。
卸売数量と高値の関係を、反連動というには難がありそう。

さて、このように標準化を行ったデータで共分散を見てみると、
相互の関係性が「-1〜1」の間に収まるので、見通しが明瞭になる。便利である。
こういった便利な方法には、大抵名前がついている。
これが、いわゆる「相関係数」と呼ばれる指標である。

これまでは、「連動」と「反連動」という言葉を使ってきたが、一般的では無い
通常は、この相関係数から、「正の相関」と「負の相関」と呼ぶ。

余談ではあるが、「負」という言葉な否定的なイメージを持っているため、
「分析上、あまり良くない傾向が出ている」と勘違いする人がいる。
これは大きな間違い。「負の相関」が強く現れるデータにも意味がある

ところで、今回は、元の値を標準化して、その共分散として相関係数導いた
しかし、相関係数は別の方法で導くことも可能であり、
以下の式によって、計算することが可能である。
ここでは、二つの変数を「」と「」として、


少し複雑に見えるかもしれない。よく見れば、難しくない。
分子は、共分散のΣの中身になっている。そして、
分母は、」と「分散のΣの中身の平方根になっている。

ここで、=」の状況を考えてみる。つまり、2つの変数が同じ状況。
確か、平方根の二乗は、元の数に戻るのだったから、


となり、相関係数の値が出てくる。よくできている。
もちろん、Rには、相関係数を算出する関数がある。
通常は、このような回りくどいやり方をせず、次のようにする。


cor(X$Oroshi_Kg, X$Taka)
cor(X$Oroshi_Kg, X$Naka)
cor(X$Oroshi_Kg, X$Yasu)

実行結果は、以下の通り

> cor(X$Oroshi_Kg, X$Taka)
[1] -0.2981213
> cor(X$Oroshi_Kg, X$Naka)
[1] -0.4143816
> cor(X$Oroshi_Kg, X$Yasu)
[1] -0.3617937

ふむふむ。相関係数は、cor()関数の使うのである。
これは、便利。よく使う関数のひとつである。

上記の結果から、卸売数量と高値、中値、安値の関係を見てみると、
全て負の値をとっているので、反連動的な傾向を持っているようである。
一般的に、魚の希少価値が値段に反映すると言われているので、
そのような傾向が相関係数にも現れているのかもしれない。

ただし、これらの値を見てみると、いずれの値も-1よりも0に近く
したがって、明らかに、「負の相関」があるとは言えない

希少価値があっても、クセが強くて用途が限られる不人気な魚や、
逆に、希少価値は低いが、需要が高く、結果として高価となる魚もある。
今回のデータでは、そうした例外的な状況が影響しているようである。

最後に、直感的に強い関連がありそうな組み合わせもやってみる。
おそらく、中値と安値は、強い正の関係がありそう。どうなる?

> cor(X$Naka, X$Yasu)
[1] 0.8704575

結果を見てみると、0.87と1に近い値が出てきた。これは、正の相関と言えそう。
では、このような状況は、どのように可視化できるか?前にやったことを思い出す。

たしか、共分散の関係を標準化したのが相関係数だったので、
散布図で可視化すれば、この状況を上手く表現できるだろう。
plot(X$Naka, X$Yasu)

今度は、明らかに右肩上がりの図になっている。このような散布図を書いた場合、
「正の相関」が強いものは、右肩「上がり」の図となり、各々の点は対角線に集まり、
「負の相関」が強いものは、右肩「下がり」の図となり、各々の点は対角線に集まる。
2つの変数間の関係を観察するには、相関係数と散布図を見比べるのが良い。

なお、「0.7以上は相関がある」などと聞くが、その表現は、正しくない
相関の基準は、誤差の許容範囲と対象数に依存するのであって、
一般的な基準値が存在しているわけではない。この話は、いずれ詳しく述べる。

2012/08/21

文系のための「データのバラツキ」(1)

今回、少々、長い。画像やデータが多いということもある。
しかし、今回の話は、最重要。理解できないと、先に進めない。

早速、本題に入る。データの「真ん中」には、様々な定義があった。
一般的なものは、平均中央値最頻値、など。
真ん中」とは何か、を突き詰めることは面白い。
しかし、本ブログの目的は、多次元データ解析。先に進む。

さて、そもそも、データの「真ん中」の話をした理由は、
各々の対象が「真ん中」から離れている度合いを知りたいからであった。
なぜ、そのようなことを知りたいのか?

離れている度合い」によって、対象の「個性の強さを知る」ためである。
ふむ。解ったような、解らないような。では、簡単な質問をする。

対象全体としての「個性」の「バラツキ」は、大きい方が良いか?
それとも、対象全体としての「バラツキ」は、小さい方が良いか?

全体としての「バラツキ」が、小さいということは、
全体として「個性」が「無く」、観察できる視点は限定される。
したがって、答えは、「バラツキ」が大きい方。

何故、そのようなことが言えるのか、
冷静に考えてみれば、簡単に理解することができる。

例えば、教室Aに出席している100人の学生に「将来なりたい職業は?」と質問し、
100人全員が「地方公務員」と回答したとする。

そして、別の教室Bに出席している別の100人に同じ質問をして、
10人が「大学教授」、20人が「弁護士」、20人が「医者」、
30人が「公認会計士」、25人が「起業家」、残り5人が「宇宙飛行士」、
と答えたとする。個性的なクラスである。熱意と野望と夢に満ちている。
できれば、このような個性的なクラスを受け持ちたい。まぁ、良い。次に進む。

さて、教室Aは、全ての学生が「地方公務員」と答えた。夢の無いクラス。
一方、教室Bは、回答が大きく別れた。個性に溢れた夢のあるクラス。
分析対象として、興味が湧いてくるのは明らかに教室Bである。なぜなら、
  • 性別の差は存在するのか?
  • 年齢が微妙に異なっているのではないか?
  • 出身地が影響のではないか?
  • 両親の職業が関係している可能性は?
などなど。バラツキが大きい、すなわち、個性が豊かであるということは
新しい問題を発見する上で重要な手がかりとなる。
それゆえに、データ分析では「バラツキ」が重要となる。

かつて、「ゆとり教育」というものがあった。
あの政策が出てきた理由は「個性豊かたな人間を育む」とか、
たしか、そのような理由であった。評価はともかく、「理念」は間違っていない。

とにかく、分析において「バラツキ」というのは、「個性」の象徴であるので、
「バラツキ」の大きいことは良いことなのである。分析者としては。

では、いよいよ、バラツキについて本格的に考えていく。
とりあえず、平均の話で用いた「魚の卸売価格」のデータを用いて考える。
何度もやってきたので、データの読み込み方は大丈夫であろう。

# Windows と Linux の人は次のコマンド
X <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は次のコマンド
X <- read.table(pipe("pbpaste") , sep=",", header=TRUE)

以下が、そのデータ。前回のものを再掲しただけ。
データの説明に関しては、平均の話を参照。

Oroshi_Kg, Taka, Naka, Yasu
Tai, 1336, 3150, 1217, 53
Chinu, 226, 630, 513, 105
Sawara, 212, 1575, 1259, 840
Yazu, 4834, 840, 315, 179
Suzuki, 618, 1575, 1146, 525
Akou, 21, 4725, 3129, 1575
Kochi, 28, 2100, 874, 210
Okoze, 28, 5250, 2635, 210
Ainame, 29, 3150, 621, 315
Hage, 1205, 1890, 383, 210
Konoshiro, 21, 2100, 1100, 105
Sayori, 12, 5250, 3916, 1260
Anago, 1637, 2625, 1721, 630
Mebaru, 330, 4200, 1680, 315
Tachiuo, 1211, 2310, 930, 105
Hamo, 1622, 3938, 592, 53
Karei, 41, 6300, 3178, 525
Hirame, 540, 2100, 1496, 210
Aji, 5149, 3150, 789, 210
Saba, 5413, 3675, 625, 53
Ika, 2414, 2888, 1083, 105
Tako, 1844, 1890, 1180, 525
Ebi, 560, 7350, 1420, 525
KurumaEbi, 222, 8925, 6508, 2625
Koiwashi, 1316, 1155, 617, 328
ObaIwashi, 2716, 499, 267, 175
Mentai, 678, 1155, 859, 394
Hamachi, 4772, 998, 632, 105
Isaki, 268, 2625, 1465, 840

では、早速、このデータの「個性」を見てみる。
これまでの説明から、最初に、データの「真ん中」を算出し、
各対象の値からの「離れ具合」を求める。とりあえず、以下を順次実行していく。
今回は、とりあえず「平均」を「真ん中」にして考えることにする。
(実際には、中央値の方が適しているが、その議論はいずれ。)

# ステップ1:データの総数(n)を求める。
n <- nrow(X)

ステップ1は、大丈夫だろう。行数を変数nに代入しているだけ。

# ステップ2:卸売数量の平均を求める。転置が必要。
m <- t(colMeans(X))

colMeans()関数は、行列の列平均を算出してくれた。
便利であるが、数値の部分のみを取り出すには「転置」が必要。
これは、数学的な問題ではなく、Rというコンピュータ言語の仕様の問題

# ステップ3:行列の引き算ができるように、平均値を総数個複製する。
(M <- matrix(rep(m, each=n), nrow=n, ncol=4))

ここでは、新しくrep()関数が登場している。Replicate(複製する)の略。
あるスカラーの値を特定のルールに従って複製することができる。
この場合は、「each = n」つまり「それぞれの値をn回複製する」という意味。
では、変数nには何が入っていたか?確か、行数(対象数)であった。
ここでは、rep()関数は、matrix()関数の中に入っていて、行数はnとなっている。
したがって、元の行列と同じサイズの、平均値が並んだ行列が作られた。

# ステップ4:元の行列から、平均値が複製された行列Mを引き算する。
(A <- X-M)

最後のステップは簡単。単なる行列の引き算。自信が無い人は復習コース
少し複雑だったかもしれない。慣れれば、大したことは無い。

さて、最後の結果は、新しく作られた変数Aに格納されている。
この行列Aの各成分は、各対象について、平均が引かれたものになっている。
この指標が、各対象の「個性」の強さを表しているものであり、「偏差」と呼ぶ。

ここで少し数式も入れる。既にやったことを数式で表現しているにすぎない。



ここで、対象の数は 1 < i < n 個あり、変数は 1 < j < p 個ある。いつもの「np行列」。

まずは、記号の読み方。「X」の上に「」が書いてある。
読み方は「エックス・チルダ」。各成分について「列平均」を引いた行列を表す。
当然、列の数(p個の列)だけ「平均」あるので、列平均を「」のように表現する。

この行列のことを「偏差行列」と呼ぶ。偏差が並んでいる行列頻繁に登場する
元の多次元データから、各対象の「個性」だけの行列に作り替えたものである。

では、偏差行列を用いて何ができるのか?試してみる。

この状況では、少々、観察しにくいので、まずは、可視化してみる。可視化は重要。
今回は、結果を美しく見せるためにちょっとした工夫がしてある。説明は後で


# 卸売数量の可視化
plot(A$Oroshi_Kg, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Oroshi")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 高値の可視化
plot(A$Taka, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Takane")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 中値の可視化
plot(A$Naka, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Nakane")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 安値の可視化
plot(A$Yasu, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Yasune")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

まずは、上記のコマンドの説明から。
基本的に、4つの図は同じ方法で作成されている。
plot()関数を使って、基本的な図を書き、
次に、abline()関数を使ってゼロを通る水平線を書いて、
最後に、axis()関数を使って軸ラベルを書いている。
各関数のパラメータを見てみる。
  • plot()関数
    • type: プロットの種類。棒で表示するので「h」。「histogram」の「h」
    • xaxt: この段階では、x軸を描画しないので「n」。「No」 の「n」
    • xlab: 今回は、x軸の軸ラベルを表示しないので空白。
    • main: 図の上に表示させるグラフタイトル。
  • abline()関数
    • h: 水平線を通る線を指定。通る場所は「0」。
  • axis()関数
    • side: ラベルを配置する場所。下に表示するので「1」を指定。
    • at: 対象のラベルを配置する位置。等間隔に「1〜総数個」。
    • labels: 実際に配置する文字列。行列Aの列名を使うので「rownames(A)」。
    • las: ラベルの向き。軸に対して垂直に置くので「2」。
Rでは、様々なパラメータによって図を整える
上記以外にも、パラメータはあるが、今回は必要なもののみ。
余裕がある人は、Rのヘルプを参照すると良い。詳しい説明がある。
例えば、axis()関数のヘルプを参照するには、
コンソール上で、「?axis()」のように、前にハテナマークを付けるだけ。

次に、結果から何を読み取れるかを考えてみる。
基本的なこととして、平均は丁度0を通る水平線となっていて、
この線よりも上に出ているのは、平均値よりも高く、
この線よりも下に出ているのは、平均値よりも低いことを示している。

とりあえず、「車海老」を観察してみる。
車海老は、卸売数量が平均を下回り、高値、中値、安値が平均よりも高い。
したがって、希少価値が高くて、全体的に価格も高いと言える。

」は、卸売数量が平均を上回り、高値、仲値、安値ともに平均以下。
つまり、希少価値は低く、全体的に安いと言える。車海老の逆の傾向

面白いのは「チヌ」。卸売数量は、平均よりも低いが、
高値、中値、安値ともに、平均よりも低い。
マダイなど、他のタイ科よりもクセがあるから、
ニーズが限られるのかもしれない

このように、平均からの離れ具合を見てやると、
それぞれの対象の個性が見えてくる。この感覚が重要である。
今回のデータから、卸売数量と価格の関係を観察したくなるが、
これは、もう少し先の話。もう少し、基礎的な話で我慢する。

さて、今回は、話が長くなる。もう少しの辛抱。
基本的な話は、時して退屈であり、また、そのような話を長々とするのも辛い。

話が逸れた。今度は、全体としての「個性」というのを考えてみる。
全体としての個性というのは、「偏差」を合わせたものと考えることができる。
すでに、「偏差」は変数Aの行列に格納されていた。
これを足しあわせてみるとどうなるか?実行する前に気づいただろうか?
Rでは、列和を次の方法で計算することができる。

colSums(A)

以下は、実行結果。

> colSums(A)
    Oroshi_Kg          Taka          Naka          Yasu
-1.818989e-12  5.002221e-12 -2.501110e-12  0.000000e+00

あれ〜?何かおかしい。若干の誤差があるが、全てが「0」となっている。
なぜか?この場合は、「平均」をデータの「真ん中」にしている。
したがって、偏差の負の側と偏差の正の側を足し合わせると、
結果として、両方を「平(たいら)に均(な)して」しまい、「0」となる。
この方法は、どうやら良くない。では、どうするべきか?

簡単な方法は、最初から、マイナスにならないようにする。
そのような方法は、これまでにやったことがあるだろうか?
思い出してみる。確か、二乗するという方法があった。これを試してみよう。

注意!これから行うのは、行列の計算ではない。行列の「成分の二乗」。

colSums(A^2)

この計算の結果は以下の通り。各列の「二乗和」が計算されている。

> colSums(A^2)
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
 78814194 117904883  49075875   8568607

コンピュータの世界では、べき乗を「^(ハット)」で表す。Rでも同様。
さて、この状況には一つ問題がある。全体の個性を表すことはできているが、
これでは、新しい対象が加わる毎に増えていき、他の状況とは比較できない
例えば、今回のデータの場合、別の日の「卸売価格」との比較ができない。

どうすれば良いのだったか?各対象の数に合致するように、
対象数の単位で基準化するのだった。つまり、対象数の逆数を掛ける。

colSums(A^2/n)

この計算結果は以下の通り。偏差の二乗の平均

> colSums(A^2/n)
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
2717730.8 4065685.6 1692271.6  295469.2

この状況も数式を使って一般化してみる。
この式の見方は、既に、平均の話でしている。省略。



σ」の記号は「シグマ」と呼ぶ。「Σ」の小文字。
二乗和であるため、二乗が付いているこれ重要

この式は、「母分散」と呼ばれる「バラツキ」の指標である。
統計学では、「母集団」と「標本」という考え方がある。
母集団というのは対象の全てであり、標本はその一部。
多くの場合、「母集団」を特定することは困難なので、
標本をとっていることになる。ふむ。そいうものであるのか。

確かに、今回のデータは、色々な意味で「全体の一部」であった。
ところで、全ての魚介類を一つの市場で扱うことは可能なことなのか?

まぁ、それは良いとして、なるほど、「標本」データである。
実は、この場合、母分散の推定値にはならないことが統計学的に証明されている。
実際の標本の分散は、母分散よりも少し大きくなる。

では、どうするべきか?そこで登場するのが「不偏分散」。
何やら、小難しい言葉が出てきた。ここは、我慢が重要。
それほど複雑ではない。以下のように式を変更する。


変更された部分は一箇所のみ。nの逆数を掛けていた部分を、n-1の逆数で掛ける。
そのような調整をしている。実際に計算してみる。

colSums(A^2/(n-1))

以下は、実行結果。

> colSums(A^2/(n-1))
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
2814792.6 4210888.7 1752709.8  306021.7

実を言うと、R には不偏分散を計算するためのvar()関数がある。
では、上の結果とvar()関数の結果とを比較する。以下を実行。

var(X$Oroshi_Kg)
var(X$Taka)
var(X$Naka)
var(X$Yasu)

以下は、実行結果。計算誤差があるが確かに同じ。
このことから、var()関数は、不偏分散を求める関数であることが解る。

> var(X$Oroshi_Kg)
[1] 2814793
> var(X$Taka)
[1] 4210889
> var(X$Naka)
[1] 1752710
> var(X$Yasu)
[1] 306021.7

ところで、「分散」というのは、偏差の二乗の和となっている。
したがって、全体の「バラツキ」を考えると、実は、二乗分だけ多い
これは、少々、不都合なことがある。どのような不都合か?
要するに、元の値や、平均値と比較することができない、という不都合。

元に戻すにはどうすれば良いのか、というのがここでの問題。
すでに実験したように、偏差を足しても「0」となる。
そこで、分散の平方根(ルート)を取ることにする。念のため。

 であり 

平方根というのは、二乗して元に戻るような値のことで、
√(ルート)」という記号によって表したのだった。
Rでは、sqrt()関数というのが用意されているので、これを使う。

sqrt(var(X$Oroshi_Kg))
sqrt(var(X$Taka))
sqrt(var(X$Naka))
sqrt(var(X$Yasu))

そして、以下が実行結果。

> sqrt(var(X$Oroshi_Kg))
[1] 1677.734
> sqrt(var(X$Taka))
[1] 2052.045
> sqrt(var(X$Naka))
[1] 1323.899
> sqrt(var(X$Yasu))
[1] 553.1923

これが、対象数で単位を揃えた偏差の大きさとなる。
つまり、ここで計算された結果は「標準化された偏差」と言える。
一般的には、これを「標準偏差」と呼び、全体としての個性の指標としている。

実は、標準偏差に関しても、Rには関数が用意されている。sd()関数である。

sd(X$Oroshi_Kg)
sd(X$Taka)
sd(X$Naka)
sd(X$Yasu)

いつものように、実行結果を下に。確かに。不偏分散の平方根になっている。

> sd(X$Oroshi_Kg)
[1] 1677.734
> sd(X$Taka)
[1] 2052.045
> sd(X$Naka)
[1] 1323.899
> sd(X$Yasu)
[1] 553.1923

さて、標準偏差に関しても数式で表してみる。慣れが重要。
不偏分散の平方根を取るのだから、難しくはない。



今日の話は長かった。重要なことは以下の3つ。
  • 偏差:平均からの離れている程度
  • 分散:偏差の二乗の和。全体としてのバラツキの指標
  • 標準偏差:分散の平方根をとって、元のデータに合わせた指標。
この3つのことを理解できていれば次の話が解るはず。

2012/08/20

文系のための「データの観察」(2)

データの「真ん中」とは何か?その疑問について再び考える。
平均」というのは、確かに「真ん中」のようである。納得できる。
しかし、本当に「平均」だけで良いのか?少々疑問が残る。

どういうことであるか?日本人の「職種別平均収入」で考えてみる。
今回は、「前フリ」無しで、最初から R を立ち上げる。

そろそろ、データの読み込み方は大丈夫だろう。説明を省く。
自信の無い人は、これまでの投稿を確認。やり方は、書いてある。

まずは、一つ目のデータを準備する。
上から順に、薬剤師、精錬工、技術士、機械工、自動車組立工、
製紙工、電気工、看護師、営業用バス運転者、社会保険労務士、
と並んでいて、その横に各業種の平均収入が入っている。
参考データはあるが、色々と変更を加えているので、ほぼ架空のデータ
給料の単位は、「万円」となっている。そのようなデータを用意した。
なお、このデータは、後の操作がしやすいように、収入順で並んでいる

salary
pharmacist, 496.6
refining engineer, 494.3
professional engineer, 489
machinary engineer, 487.8
auto assemblyman, 477.6
paper making engineer, 471.5
electronic engineer, 465.9
clinical nurse, 465.2
bus driver, 450.1
specialist in social insurance, 446.8

このデータを「X1」という変数に格納する。

# Windows  と Linux の人は以下のコマンド
X1 <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は以下のコマンド
X1 <- read.table(pipe("pbpaste"), sep=",", header=TRUE)

では、実際にこのデータを使って分析を行なってみる。
平均収入はどのようになっているのか?以下が出力結果。

> mean(X1$salary)
[1] 474.48

なるほど、納得できる。これらの職種間の平均収入は、474.48万円である。
元のデータを観察してみると、なんとなく、納得のいく数値である。

では、次に別のデータを用意してみる。
今度は、先のデータに加えて、パイロット、大学教授、医者、
の3つの職業を加えた。このデータを変数「X2」に入れる。
このデータも、収入順に並んでいるこのことは後に重要

salary
pilot, 1295.5
professor, 1133.2
doctor, 1101.2
pharmacist, 496.6
refining engineer, 494.3
professional engineer, 489
machine engineer, 487.8
auto assemblyman, 477.6
paper making engineer, 471.5
electronic engineer, 465.9
clinical nurse, 465.2
bus driver, 450.1
specialist in social insurance, 446.8

データを変数にセットするコマンドは以下の通り。

# Windows  と Linux の人は以下のコマンド
X2 <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は以下のコマンド
X2 <- read.table(pipe("pbpaste"), sep=",", header=TRUE)

X1と同様に、平均を出してみる。以下は、出力結果。

> mean(X2$salary)
[1] 636.5154

うん?636.515万円?この結果を見て「違和感」を感じる。3つ加えただけ。
先程に比べて、値が大きすぎる。これは、本当に全体の「真ん中」と言えるか?
追加した3つの職種によって、平均は一気に引き上げられた。ここで疑問が生まれる。
これらは、むしろ、「外れ値」として考えた方が良いのでは無いか?と。

何か、新しい政策を考える際に、安易に収入の平均を用いると、
トンデモナイことが起きる。実態に合わない政策が決定されるかもしれない。
吟味せずに、数値データを扱うことは、極めて危険なことである。

などと、問題点を指摘していても仕方ない。別の方法が必要である。
どうするべきか?

そこで登場するのが、2つ目の「真ん中」の概念。
平均」ではなく、データの「真ん中」番目を見てはどうか?
なるほど。確かに、これも「真ん中」である。

では、最初にX2の対象数を数えてみる。Rを使って。
nrow()関数を覚えているだろうか?

> nrow(X2)
[1] 13

したがって、このデータの場合は、7番目が「真ん中」番目である。
今回は総数が奇数なので、上から数えても、下から数えても「7番目」である。
試しに、7番目のデータを見てみる。予め収入順で並んでいるので楽
7行目を指定するので、以下のような結果が出る。

> X2[7,]
[1] 487.8

通常は、下から数えることになっている。これを「中央値」と呼ぶ。
R では、中央値を出す関数を持っている。median()関数である。
この関数は、値が並んでいなくても使える

> median(X2$salary)
[1] 487.8

なるほど。この結果を見てみると、平均よりも中央値の方が実態に合っている。
そのように思える。では、X1の場合と比較してみる。

> median(X1$salary)
[1] 474.55
> median(X2$salary)
[1] 487.8

若干、値が高くなっているが、平均よりも安定している。
データの「真ん中」を決める際に、安定感が無い指標は良いとは言えない。
したがって、中央値の方が、より適切にデータの「真ん中」を示していると言える。

ただし、データの総数が非常に大きく、
また、データが真ん中に向かって「綺麗な釣鐘状」に存在する場合、
平均値と中央値は近づく。そのような場合には、平均でも良いということになる。

ところで、気づいた人も居るハズ。X1のデータの総数は、偶数であった

奇数の場合は、ちょうど「真ん中」というのがあって決めやすいが、
偶数の場合は、「真ん中」が2つあって簡単に決めることができない。


実は、中央値というのは、奇数(odd)偶数(even)で取り方が異なる。
どうするべきか?議論が分かれるところである。


上を採用する方法、下を採用する方法も考え得る。
あるいは、上下2つの値の平均を採用するという方法もある。

どの方法が正しいかを述べることは困難であるが、
やはり、「真ん中」という意味では、平均を取る方法が適切に思える。
なお、R の median()関数 も偶数の場合には平均を取っている。

基本的な説明は以上であるが、やはり、数理的なことも理解しておいた方が良い。
もう少し、詳しく、「中央値」について考えてみる。



数式に慣れていない人は卒倒するかもしれない。落ち着きが必要。

ここで、Qという変数が登場する。これは、Quantile (分位数)の頭文字。
分位数というのは、あるデータをある数で等分すること

なるほど、「中央値」というのは、全体を2つに等分するので、
二分位数」ということか。もっとも、そんな言い方はしないが。
とにかく、そのように考えると、Qの「添字」である「1/2」の意味が解る。

さて、イコールを挟んで右側、つまり、右舷を見てみる。厄介に見えるかもしれない。
二段に分かれている。上には「if n is odd」、下には「if n is even」と書いてある。
なるほど、上の方は奇数の場合で、下の方は偶数の場合であるか。

大体、分かってきた。ここで、ちょっとした疑問がある。
何故、「x」ではなく、「x'」となっているのか?疑問に思わない人もいるかも。

そもそも、元のデータの変数が「x」だったして、
元のデータ「x」が今回のように、昇順に並んでいるとは限らない
そのような場合には、必ず、並び替え(ソーティング)が必要となる。
「x'」というのは、要するに、元のデータを並び替えただけのもの

さて、後は簡単である。添字は、データの「何番目」であるかを表す。
したがって、次のことが言える。

  • 奇数の場合には、「総数nに1を足して2で割った数」番目が「中央値」となる。
  • 偶数の場合には、「総数を2で割った」番目と、「それより一つ上」番目を足して、さらに、その合計を「2で割った値」が「中央値」となる。

解りにくいかもしれない。X2の場合は、総数が13であった(n=13)。
つまり、奇数。したがって、(13+1) ÷ 2 = 7番目の値が中央値となる。

では、X1の場合はどのようになるのか。確か、総数は10であった(n=10)。
今度は、偶数。だから、二段目の式を当てはめることになる。
10÷2番目と(10÷2)+1番目、つまり、5番目と6番目の値を足して割った数が中央値
この場合は、少々厄介であるか。Rで確認してみる。以下、実行結果。

> X1[5,]
[1] 477.6
> X1[6,]
[1] 471.5
> (X1[5,]+X1[6,])/2
[1] 474.55
> median(X1$salary)
[1] 474.55

確かに、正しく計算されていて、上に提示した式とも合致している。
R を用いると、数式上の表現と、実際の処理を比較できるので良い。

さてさて、以上のことで、データの「真ん中」ということが整理できた。
平均と中央値という2つの決め方がデータの「真ん中」なのである。

本当にそれで良いのか?まだ、「真ん中」の決め方があるかもしれない。
では、どのような方法があるか?確か、外れ値に影響されないことが重要だった
例えば、最も頻繁に登場する値を「真ん中」として考えられないだろうか?
ふむふむ。これは検討の余地がありそうである。この話はいずれ。

2012/08/19

文系のための「データの観察」(1)

ケトレーの話では、「平均人」というものが出てきた。
平均人は、対象の個性を測るための架空の擬似人格のようなものであった。
そして、個性というのは、この平均人からの距離(偏差)であった。

データの「真ん中」を見極めることと、
個性の強さとも言える「バラツキ」を評価すること、
この2つの基本的操作は、データ解析において、最も重要なことである。
特に、データの個性を表す「バラツキ」はデータ解析において基本中の基本。

近年、文系分野の研究者が「見様見真似」で難しい分析を行なっているの見かける。
確かに、私自身、そうした時期があったし、そういった悪しき癖は残っている。
しかしながら、基本的な事だけでも、重要なことは分かる。

最初に考えるべきことは、データの「真ん中」である。「バラツキ」はその後。
データの「真ん中」が分からないと、「バラツキ」を計るための基準も定まらない。
本当は「バラツキ」について考えたいのだが、まずは「真ん中」の話から。

そもそも、データの「真ん中」とは何か?

多くの人は、「平均」という言葉を思い浮かべるのではないか?
なるほど、確かに、平均というのは良い考えである。
実際、ケトレーは、平均という概念が、データ全体を説明するものと考えた。

では、平均とは何か?魚の値段を例に考えてみる。
まぁ、魚である必要は無いのだが、私は魚介類が好きなのだ。

仮に、魚屋さんで400円のお刺身、200円の目刺し、600円の鰈の一夜干し、
この3つの品目が並んでいたとする。
適当だが、妥当な値段である。まぁ、良い。単なる実験データ。

ふむ。では、この3つの品目の値段の平均は?電卓を使っても良い。
もちろん、Rで計算しても良い。計算式は、自分で立てられるだろう。

答えは、400円。さすがに、この計算は大丈夫であろう。
この程度の計算ができないと困る。「文系」とかそういう問題では無い。

では、どような計算を行ったのか?数式を見ながら考えてみる。
おそらく、以下のような計算を考えたはずである。



あるいは、以下のように考えた人もいるはず。



2つ目の式は、品目3つを一つの単位(つまり全体を「3」)としていて、
したがって、値段全体を単位一つ分として考えた場合の、
単位一つ分の値段理屈上どうなるかを考えている。どこかで聞いたような?

確か、「文系のための「逆行列」(1)」の話。

なるほど、1/3 を掛けるというのは、
対象数に合致するような単位に換算するために、
対象数の逆数をかけているのだった。

要するに、3つの品目に個性が無く、全て同じ値段だったら?というわけである。
したがって、400円という単位が3つで全体が説明できる

ところで、上記の場合は、たった三品であったが、
品目が多くなると、式が長すぎて書くのも、見るのも面倒。
そこで、上記の式を抽象化し、より一般的なものに書き直してみる



まず、品目の変数をxと置く。右下の数字と記号は何であったか?
これは「添字」と呼んだ。何番目の対象かを示していて、
不特定番目の対象を「i」番目、
最後番目の対象を「n」番目としている。
したがって、全体の個数(総数)は当然「n」個。

なるほど、これで、対象がいくら増えたとしても、
この長さの式で平均を書き表すことができる。

だが、やはりまだ長い。しかも、「・・・」という記号は美しくない
ということで、自称「文系」が苦手とする「Σ(シグマ)」を使って表現する。



イコールで分けられた3つの式は同じ。
左端は、nで割るというイメージ。自称文系には、解りやすいが見難い。
真ん中は、nの逆数を掛けるというイメージ。理屈っぽい式。教科書はこの形式。
右端は、慣例的な表現で、「エックスバー」と読む。玄人向け。計算式を省略。
上に「-」が付いているものは、何かの平均を表す。

さて、ここで、シグマの見方を復習しておく。
Σという記号は、「足し算の繰り返し」を表す。
Σの記号の「」についてあるのが、添字の記号とその開始番号
Σの記号の「」についてあるのが、添字の最後(総数)を表している。

一回目の足し算が終わる度に、iの値が1〜nまで一つずつ繰り上がる。
そして、i=nとなったときに、足し算の計算が終了する。
その結果を総数nで割ると考えるか、総数nの逆数で掛けると考えるかで、
式の表現は異なる。ただし、結果は同じ。

エックスバー」による表現は、非常によく出てくる。
平均というのは、誰もが理解している(という前提)ので、
慣例的にこの表現を使う。説明無しに登場することも多い
この意味が解らないと、教科書の内容をサッパリ理解できない。

以上で基本的な「平均」の話は終わり。

さて、ここからは、「R」を使って平均の計算をやってみる。
今度は、「魚の卸売価格」を例に考えてみる。
私は、魚介類が好きでなのである。

まずは、コンソールを立ち上げて、データ読み込みのコマンドを入力。実行はまだ

データの読み込みは、read.table() 関数を使うのだった。

# Windows と Linux の人は次のコマンド
X <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は次のコマンド
X <- read.table(pipe("pbpaste") , sep=",", header=TRUE)

次に、今回の例で用いるデータをコピーした後、上のコマンドを実行する。

Oroshi_Kg, Taka, Naka, Yasu
Tai, 1336, 3150, 1217, 53
Chinu, 226, 630, 513, 105
Sawara, 212, 1575, 1259, 840
Yazu, 4834, 840, 315, 179
Suzuki, 618, 1575, 1146, 525
Akou, 21, 4725, 3129, 1575
Kochi, 28, 2100, 874, 210
Okoze, 28, 5250, 2635, 210
Ainame, 29, 3150, 621, 315
Hage, 1205, 1890, 383, 210
Konoshiro, 21, 2100, 1100, 105
Sayori, 12, 5250, 3916, 1260
Anago, 1637, 2625, 1721, 630
Mebaru, 330, 4200, 1680, 315
Tachiuo, 1211, 2310, 930, 105
Hamo, 1622, 3938, 592, 53
Karei, 41, 6300, 3178, 525
Hirame, 540, 2100, 1496, 210
Aji, 5149, 3150, 789, 210
Saba, 5413, 3675, 625, 53
Ika, 2414, 2888, 1083, 105
Tako, 1844, 1890, 1180, 525
Ebi, 560, 7350, 1420, 525
KurumaEbi, 222, 8925, 6508, 2625
Koiwashi, 1316, 1155, 617, 328
ObaIwashi, 2716, 499, 267, 175
Mentai, 678, 1155, 859, 394
Hamachi, 4772, 998, 632, 105
Isaki, 268, 2625, 1465, 840

このデータは多次元データになっている。
このデータにおいては、対象が魚の名前で、属性がそれぞれ、
卸売数量(Kg):Oroshi_Kg、高値:Taka、中値:Naka、安値:Yasu、
となっている。つまり、四次元のデータとして表現されていることになる。

ところで、データのことを事前に知っておくことは重要である。

このデータの出典は、広島市中央卸売市場の水産物市況(2012/08/18)から
欠損データを抜いたもの。すでに、ある程度要約されているデータである。

高値、中値、安値、というのは魚の値段のおおよその基準。
魚には大小があって、大小によって値段も、可能な調理の幅も異なる。
高値は、大きくて色々な用途に使えるもの。そして、高い。
中値は、一般的なサイズで、多くの人が目にして、買って、家庭で調理するもの。
安値は、小ぶりなもので、利用の用途が限られるようなもの。
このデータでは、(おそらく)それぞれの値の平均。詳細は不明。

この話に関しては、以下のページに解りやすい説明があった。
http://www.shonai-nippo.co.jp/square/feature/food/sf48.html

少し話が逸れたが、まずは、卸売数量の平均を求めてみる。
Rでは、mean()関数で平均を計算できる。非常に、簡単。

mean(X$Oroshi_Kg)

このコマンドでは、Xという変数の属性名を「$」記号を挟んで指定している。
あるいは、次ようにして求めることもできる。

mean(X[,1])

この表記は、Xの「1列目」という考え方で指定している。
ちなみに、大カッコ(「[ , ]」)のカンマの右側は行数左側は列数を表す。
以下は、実行結果。

> mean(X$Oroshi_Kg)
[1] 1355.276
> mean(X[,1])
[1] 1355.276

同じことを行なっているので、計算結果は同じ。これは当然。
同様に、他の変数の平均も計算してみる。

mean(X$Taka)
mean(X$Naka)
mean(X$Yasu)

以下は、上記コマンドの実行結果。

> mean(X$Taka)
[1] 3035.103
> mean(X$Naka)
[1] 1453.448
> mean(X$Yasu)
[1] 458.9655

ついでなので、以下のコマンドも実行してみる。
なお、大文字と小文字に注意すること。
Rのコマンドは大文字と小文字を区別する。

colMeans(X)

どのような結果が出てくるか?以下は実行結果。
4つの変数の平均を同時に計算できる。

> colMeans(X)
Oroshi_Kg       Taka       Naka       Yasu 
1355.2759 3035.1034 1453.4483  458.9655 

このコマンドは「列平均(Column Means)」を計算する関数であり、
colMeans()関数と呼ぶ。複雑な分析を行うようになると頻繁に登場する。
今の段階で覚えておくと良い。

今回のデータでは、全く意味は無いが、行平均(Row Means)」もある。
これは、rowMeans()関数で計算できる。
あくまで練習。これもやってみる。実行結果は以下の通り。

> rowMeans(X)
      Tai     Chinu    Sawara      Yazu    Suzuki      Akou     Kochi     Okoze 
  1439.00    368.50    971.50   1542.00    966.00   2362.50    803.00   2030.75 
   Ainame      Hage Konoshiro    Sayori     Anago    Mebaru   Tachiuo      Hamo 
  1028.75    922.00    831.50   2609.50   1653.25   1631.25   1139.00   1551.25 
    Karei    Hirame       Aji      Saba       Ika      Tako       Ebi KurumaEbi 
  2511.00   1086.50   2324.50   2441.50   1622.50   1359.75   2463.75   4570.00 
 Koiwashi ObaIwashi    Mentai   Hamachi     Isaki 
   854.00    914.25    771.50   1626.75   1299.50 

となる。各対象(魚)について、卸売数量、高値、中値、安値、の平均が出ている。
全く意味は無い。このような無意味なことはやってはいけない。

そもそも、卸売数量と、他の3つの属性は単位が異なっていて比較できないし、
高値、中値、安値というのは、各対象の何かの代表的な値であって、
しかも、中値がある意味でデータの「真ん中」を示している。
あくまで、コマンドの実行例として割りきる。

さて、今回は、「平均」というデータの真ん中について考えた。
ふむ。納得できた。だが、ここで一つの疑問が湧いてくる。
すなわち、平均以外の方法はあり得るのか?という疑問である。

なるほど。確かに、平均という考え方は的を得ているように思えるが、
何か、重大な問題を見落としているようにも思える。何が問題なのか?
この疑問については、次回に考えてみることにしよう。