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2012/08/21

文系のための「データのバラツキ」(1)

今回、少々、長い。画像やデータが多いということもある。
しかし、今回の話は、最重要。理解できないと、先に進めない。

早速、本題に入る。データの「真ん中」には、様々な定義があった。
一般的なものは、平均中央値最頻値、など。
真ん中」とは何か、を突き詰めることは面白い。
しかし、本ブログの目的は、多次元データ解析。先に進む。

さて、そもそも、データの「真ん中」の話をした理由は、
各々の対象が「真ん中」から離れている度合いを知りたいからであった。
なぜ、そのようなことを知りたいのか?

離れている度合い」によって、対象の「個性の強さを知る」ためである。
ふむ。解ったような、解らないような。では、簡単な質問をする。

対象全体としての「個性」の「バラツキ」は、大きい方が良いか?
それとも、対象全体としての「バラツキ」は、小さい方が良いか?

全体としての「バラツキ」が、小さいということは、
全体として「個性」が「無く」、観察できる視点は限定される。
したがって、答えは、「バラツキ」が大きい方。

何故、そのようなことが言えるのか、
冷静に考えてみれば、簡単に理解することができる。

例えば、教室Aに出席している100人の学生に「将来なりたい職業は?」と質問し、
100人全員が「地方公務員」と回答したとする。

そして、別の教室Bに出席している別の100人に同じ質問をして、
10人が「大学教授」、20人が「弁護士」、20人が「医者」、
30人が「公認会計士」、25人が「起業家」、残り5人が「宇宙飛行士」、
と答えたとする。個性的なクラスである。熱意と野望と夢に満ちている。
できれば、このような個性的なクラスを受け持ちたい。まぁ、良い。次に進む。

さて、教室Aは、全ての学生が「地方公務員」と答えた。夢の無いクラス。
一方、教室Bは、回答が大きく別れた。個性に溢れた夢のあるクラス。
分析対象として、興味が湧いてくるのは明らかに教室Bである。なぜなら、
  • 性別の差は存在するのか?
  • 年齢が微妙に異なっているのではないか?
  • 出身地が影響のではないか?
  • 両親の職業が関係している可能性は?
などなど。バラツキが大きい、すなわち、個性が豊かであるということは
新しい問題を発見する上で重要な手がかりとなる。
それゆえに、データ分析では「バラツキ」が重要となる。

かつて、「ゆとり教育」というものがあった。
あの政策が出てきた理由は「個性豊かたな人間を育む」とか、
たしか、そのような理由であった。評価はともかく、「理念」は間違っていない。

とにかく、分析において「バラツキ」というのは、「個性」の象徴であるので、
「バラツキ」の大きいことは良いことなのである。分析者としては。

では、いよいよ、バラツキについて本格的に考えていく。
とりあえず、平均の話で用いた「魚の卸売価格」のデータを用いて考える。
何度もやってきたので、データの読み込み方は大丈夫であろう。

# Windows と Linux の人は次のコマンド
X <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は次のコマンド
X <- read.table(pipe("pbpaste") , sep=",", header=TRUE)

以下が、そのデータ。前回のものを再掲しただけ。
データの説明に関しては、平均の話を参照。

Oroshi_Kg, Taka, Naka, Yasu
Tai, 1336, 3150, 1217, 53
Chinu, 226, 630, 513, 105
Sawara, 212, 1575, 1259, 840
Yazu, 4834, 840, 315, 179
Suzuki, 618, 1575, 1146, 525
Akou, 21, 4725, 3129, 1575
Kochi, 28, 2100, 874, 210
Okoze, 28, 5250, 2635, 210
Ainame, 29, 3150, 621, 315
Hage, 1205, 1890, 383, 210
Konoshiro, 21, 2100, 1100, 105
Sayori, 12, 5250, 3916, 1260
Anago, 1637, 2625, 1721, 630
Mebaru, 330, 4200, 1680, 315
Tachiuo, 1211, 2310, 930, 105
Hamo, 1622, 3938, 592, 53
Karei, 41, 6300, 3178, 525
Hirame, 540, 2100, 1496, 210
Aji, 5149, 3150, 789, 210
Saba, 5413, 3675, 625, 53
Ika, 2414, 2888, 1083, 105
Tako, 1844, 1890, 1180, 525
Ebi, 560, 7350, 1420, 525
KurumaEbi, 222, 8925, 6508, 2625
Koiwashi, 1316, 1155, 617, 328
ObaIwashi, 2716, 499, 267, 175
Mentai, 678, 1155, 859, 394
Hamachi, 4772, 998, 632, 105
Isaki, 268, 2625, 1465, 840

では、早速、このデータの「個性」を見てみる。
これまでの説明から、最初に、データの「真ん中」を算出し、
各対象の値からの「離れ具合」を求める。とりあえず、以下を順次実行していく。
今回は、とりあえず「平均」を「真ん中」にして考えることにする。
(実際には、中央値の方が適しているが、その議論はいずれ。)

# ステップ1:データの総数(n)を求める。
n <- nrow(X)

ステップ1は、大丈夫だろう。行数を変数nに代入しているだけ。

# ステップ2:卸売数量の平均を求める。転置が必要。
m <- t(colMeans(X))

colMeans()関数は、行列の列平均を算出してくれた。
便利であるが、数値の部分のみを取り出すには「転置」が必要。
これは、数学的な問題ではなく、Rというコンピュータ言語の仕様の問題

# ステップ3:行列の引き算ができるように、平均値を総数個複製する。
(M <- matrix(rep(m, each=n), nrow=n, ncol=4))

ここでは、新しくrep()関数が登場している。Replicate(複製する)の略。
あるスカラーの値を特定のルールに従って複製することができる。
この場合は、「each = n」つまり「それぞれの値をn回複製する」という意味。
では、変数nには何が入っていたか?確か、行数(対象数)であった。
ここでは、rep()関数は、matrix()関数の中に入っていて、行数はnとなっている。
したがって、元の行列と同じサイズの、平均値が並んだ行列が作られた。

# ステップ4:元の行列から、平均値が複製された行列Mを引き算する。
(A <- X-M)

最後のステップは簡単。単なる行列の引き算。自信が無い人は復習コース
少し複雑だったかもしれない。慣れれば、大したことは無い。

さて、最後の結果は、新しく作られた変数Aに格納されている。
この行列Aの各成分は、各対象について、平均が引かれたものになっている。
この指標が、各対象の「個性」の強さを表しているものであり、「偏差」と呼ぶ。

ここで少し数式も入れる。既にやったことを数式で表現しているにすぎない。



ここで、対象の数は 1 < i < n 個あり、変数は 1 < j < p 個ある。いつもの「np行列」。

まずは、記号の読み方。「X」の上に「」が書いてある。
読み方は「エックス・チルダ」。各成分について「列平均」を引いた行列を表す。
当然、列の数(p個の列)だけ「平均」あるので、列平均を「」のように表現する。

この行列のことを「偏差行列」と呼ぶ。偏差が並んでいる行列頻繁に登場する
元の多次元データから、各対象の「個性」だけの行列に作り替えたものである。

では、偏差行列を用いて何ができるのか?試してみる。

この状況では、少々、観察しにくいので、まずは、可視化してみる。可視化は重要。
今回は、結果を美しく見せるためにちょっとした工夫がしてある。説明は後で


# 卸売数量の可視化
plot(A$Oroshi_Kg, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Oroshi")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 高値の可視化
plot(A$Taka, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Takane")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 中値の可視化
plot(A$Naka, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Nakane")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 安値の可視化
plot(A$Yasu, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Yasune")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

まずは、上記のコマンドの説明から。
基本的に、4つの図は同じ方法で作成されている。
plot()関数を使って、基本的な図を書き、
次に、abline()関数を使ってゼロを通る水平線を書いて、
最後に、axis()関数を使って軸ラベルを書いている。
各関数のパラメータを見てみる。
  • plot()関数
    • type: プロットの種類。棒で表示するので「h」。「histogram」の「h」
    • xaxt: この段階では、x軸を描画しないので「n」。「No」 の「n」
    • xlab: 今回は、x軸の軸ラベルを表示しないので空白。
    • main: 図の上に表示させるグラフタイトル。
  • abline()関数
    • h: 水平線を通る線を指定。通る場所は「0」。
  • axis()関数
    • side: ラベルを配置する場所。下に表示するので「1」を指定。
    • at: 対象のラベルを配置する位置。等間隔に「1〜総数個」。
    • labels: 実際に配置する文字列。行列Aの列名を使うので「rownames(A)」。
    • las: ラベルの向き。軸に対して垂直に置くので「2」。
Rでは、様々なパラメータによって図を整える
上記以外にも、パラメータはあるが、今回は必要なもののみ。
余裕がある人は、Rのヘルプを参照すると良い。詳しい説明がある。
例えば、axis()関数のヘルプを参照するには、
コンソール上で、「?axis()」のように、前にハテナマークを付けるだけ。

次に、結果から何を読み取れるかを考えてみる。
基本的なこととして、平均は丁度0を通る水平線となっていて、
この線よりも上に出ているのは、平均値よりも高く、
この線よりも下に出ているのは、平均値よりも低いことを示している。

とりあえず、「車海老」を観察してみる。
車海老は、卸売数量が平均を下回り、高値、中値、安値が平均よりも高い。
したがって、希少価値が高くて、全体的に価格も高いと言える。

」は、卸売数量が平均を上回り、高値、仲値、安値ともに平均以下。
つまり、希少価値は低く、全体的に安いと言える。車海老の逆の傾向

面白いのは「チヌ」。卸売数量は、平均よりも低いが、
高値、中値、安値ともに、平均よりも低い。
マダイなど、他のタイ科よりもクセがあるから、
ニーズが限られるのかもしれない

このように、平均からの離れ具合を見てやると、
それぞれの対象の個性が見えてくる。この感覚が重要である。
今回のデータから、卸売数量と価格の関係を観察したくなるが、
これは、もう少し先の話。もう少し、基礎的な話で我慢する。

さて、今回は、話が長くなる。もう少しの辛抱。
基本的な話は、時して退屈であり、また、そのような話を長々とするのも辛い。

話が逸れた。今度は、全体としての「個性」というのを考えてみる。
全体としての個性というのは、「偏差」を合わせたものと考えることができる。
すでに、「偏差」は変数Aの行列に格納されていた。
これを足しあわせてみるとどうなるか?実行する前に気づいただろうか?
Rでは、列和を次の方法で計算することができる。

colSums(A)

以下は、実行結果。

> colSums(A)
    Oroshi_Kg          Taka          Naka          Yasu
-1.818989e-12  5.002221e-12 -2.501110e-12  0.000000e+00

あれ〜?何かおかしい。若干の誤差があるが、全てが「0」となっている。
なぜか?この場合は、「平均」をデータの「真ん中」にしている。
したがって、偏差の負の側と偏差の正の側を足し合わせると、
結果として、両方を「平(たいら)に均(な)して」しまい、「0」となる。
この方法は、どうやら良くない。では、どうするべきか?

簡単な方法は、最初から、マイナスにならないようにする。
そのような方法は、これまでにやったことがあるだろうか?
思い出してみる。確か、二乗するという方法があった。これを試してみよう。

注意!これから行うのは、行列の計算ではない。行列の「成分の二乗」。

colSums(A^2)

この計算の結果は以下の通り。各列の「二乗和」が計算されている。

> colSums(A^2)
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
 78814194 117904883  49075875   8568607

コンピュータの世界では、べき乗を「^(ハット)」で表す。Rでも同様。
さて、この状況には一つ問題がある。全体の個性を表すことはできているが、
これでは、新しい対象が加わる毎に増えていき、他の状況とは比較できない
例えば、今回のデータの場合、別の日の「卸売価格」との比較ができない。

どうすれば良いのだったか?各対象の数に合致するように、
対象数の単位で基準化するのだった。つまり、対象数の逆数を掛ける。

colSums(A^2/n)

この計算結果は以下の通り。偏差の二乗の平均

> colSums(A^2/n)
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
2717730.8 4065685.6 1692271.6  295469.2

この状況も数式を使って一般化してみる。
この式の見方は、既に、平均の話でしている。省略。



σ」の記号は「シグマ」と呼ぶ。「Σ」の小文字。
二乗和であるため、二乗が付いているこれ重要

この式は、「母分散」と呼ばれる「バラツキ」の指標である。
統計学では、「母集団」と「標本」という考え方がある。
母集団というのは対象の全てであり、標本はその一部。
多くの場合、「母集団」を特定することは困難なので、
標本をとっていることになる。ふむ。そいうものであるのか。

確かに、今回のデータは、色々な意味で「全体の一部」であった。
ところで、全ての魚介類を一つの市場で扱うことは可能なことなのか?

まぁ、それは良いとして、なるほど、「標本」データである。
実は、この場合、母分散の推定値にはならないことが統計学的に証明されている。
実際の標本の分散は、母分散よりも少し大きくなる。

では、どうするべきか?そこで登場するのが「不偏分散」。
何やら、小難しい言葉が出てきた。ここは、我慢が重要。
それほど複雑ではない。以下のように式を変更する。


変更された部分は一箇所のみ。nの逆数を掛けていた部分を、n-1の逆数で掛ける。
そのような調整をしている。実際に計算してみる。

colSums(A^2/(n-1))

以下は、実行結果。

> colSums(A^2/(n-1))
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
2814792.6 4210888.7 1752709.8  306021.7

実を言うと、R には不偏分散を計算するためのvar()関数がある。
では、上の結果とvar()関数の結果とを比較する。以下を実行。

var(X$Oroshi_Kg)
var(X$Taka)
var(X$Naka)
var(X$Yasu)

以下は、実行結果。計算誤差があるが確かに同じ。
このことから、var()関数は、不偏分散を求める関数であることが解る。

> var(X$Oroshi_Kg)
[1] 2814793
> var(X$Taka)
[1] 4210889
> var(X$Naka)
[1] 1752710
> var(X$Yasu)
[1] 306021.7

ところで、「分散」というのは、偏差の二乗の和となっている。
したがって、全体の「バラツキ」を考えると、実は、二乗分だけ多い
これは、少々、不都合なことがある。どのような不都合か?
要するに、元の値や、平均値と比較することができない、という不都合。

元に戻すにはどうすれば良いのか、というのがここでの問題。
すでに実験したように、偏差を足しても「0」となる。
そこで、分散の平方根(ルート)を取ることにする。念のため。

 であり 

平方根というのは、二乗して元に戻るような値のことで、
√(ルート)」という記号によって表したのだった。
Rでは、sqrt()関数というのが用意されているので、これを使う。

sqrt(var(X$Oroshi_Kg))
sqrt(var(X$Taka))
sqrt(var(X$Naka))
sqrt(var(X$Yasu))

そして、以下が実行結果。

> sqrt(var(X$Oroshi_Kg))
[1] 1677.734
> sqrt(var(X$Taka))
[1] 2052.045
> sqrt(var(X$Naka))
[1] 1323.899
> sqrt(var(X$Yasu))
[1] 553.1923

これが、対象数で単位を揃えた偏差の大きさとなる。
つまり、ここで計算された結果は「標準化された偏差」と言える。
一般的には、これを「標準偏差」と呼び、全体としての個性の指標としている。

実は、標準偏差に関しても、Rには関数が用意されている。sd()関数である。

sd(X$Oroshi_Kg)
sd(X$Taka)
sd(X$Naka)
sd(X$Yasu)

いつものように、実行結果を下に。確かに。不偏分散の平方根になっている。

> sd(X$Oroshi_Kg)
[1] 1677.734
> sd(X$Taka)
[1] 2052.045
> sd(X$Naka)
[1] 1323.899
> sd(X$Yasu)
[1] 553.1923

さて、標準偏差に関しても数式で表してみる。慣れが重要。
不偏分散の平方根を取るのだから、難しくはない。



今日の話は長かった。重要なことは以下の3つ。
  • 偏差:平均からの離れている程度
  • 分散:偏差の二乗の和。全体としてのバラツキの指標
  • 標準偏差:分散の平方根をとって、元のデータに合わせた指標。
この3つのことを理解できていれば次の話が解るはず。

2012/08/19

文系のための「データの観察」(1)

ケトレーの話では、「平均人」というものが出てきた。
平均人は、対象の個性を測るための架空の擬似人格のようなものであった。
そして、個性というのは、この平均人からの距離(偏差)であった。

データの「真ん中」を見極めることと、
個性の強さとも言える「バラツキ」を評価すること、
この2つの基本的操作は、データ解析において、最も重要なことである。
特に、データの個性を表す「バラツキ」はデータ解析において基本中の基本。

近年、文系分野の研究者が「見様見真似」で難しい分析を行なっているの見かける。
確かに、私自身、そうした時期があったし、そういった悪しき癖は残っている。
しかしながら、基本的な事だけでも、重要なことは分かる。

最初に考えるべきことは、データの「真ん中」である。「バラツキ」はその後。
データの「真ん中」が分からないと、「バラツキ」を計るための基準も定まらない。
本当は「バラツキ」について考えたいのだが、まずは「真ん中」の話から。

そもそも、データの「真ん中」とは何か?

多くの人は、「平均」という言葉を思い浮かべるのではないか?
なるほど、確かに、平均というのは良い考えである。
実際、ケトレーは、平均という概念が、データ全体を説明するものと考えた。

では、平均とは何か?魚の値段を例に考えてみる。
まぁ、魚である必要は無いのだが、私は魚介類が好きなのだ。

仮に、魚屋さんで400円のお刺身、200円の目刺し、600円の鰈の一夜干し、
この3つの品目が並んでいたとする。
適当だが、妥当な値段である。まぁ、良い。単なる実験データ。

ふむ。では、この3つの品目の値段の平均は?電卓を使っても良い。
もちろん、Rで計算しても良い。計算式は、自分で立てられるだろう。

答えは、400円。さすがに、この計算は大丈夫であろう。
この程度の計算ができないと困る。「文系」とかそういう問題では無い。

では、どような計算を行ったのか?数式を見ながら考えてみる。
おそらく、以下のような計算を考えたはずである。



あるいは、以下のように考えた人もいるはず。



2つ目の式は、品目3つを一つの単位(つまり全体を「3」)としていて、
したがって、値段全体を単位一つ分として考えた場合の、
単位一つ分の値段理屈上どうなるかを考えている。どこかで聞いたような?

確か、「文系のための「逆行列」(1)」の話。

なるほど、1/3 を掛けるというのは、
対象数に合致するような単位に換算するために、
対象数の逆数をかけているのだった。

要するに、3つの品目に個性が無く、全て同じ値段だったら?というわけである。
したがって、400円という単位が3つで全体が説明できる

ところで、上記の場合は、たった三品であったが、
品目が多くなると、式が長すぎて書くのも、見るのも面倒。
そこで、上記の式を抽象化し、より一般的なものに書き直してみる



まず、品目の変数をxと置く。右下の数字と記号は何であったか?
これは「添字」と呼んだ。何番目の対象かを示していて、
不特定番目の対象を「i」番目、
最後番目の対象を「n」番目としている。
したがって、全体の個数(総数)は当然「n」個。

なるほど、これで、対象がいくら増えたとしても、
この長さの式で平均を書き表すことができる。

だが、やはりまだ長い。しかも、「・・・」という記号は美しくない
ということで、自称「文系」が苦手とする「Σ(シグマ)」を使って表現する。



イコールで分けられた3つの式は同じ。
左端は、nで割るというイメージ。自称文系には、解りやすいが見難い。
真ん中は、nの逆数を掛けるというイメージ。理屈っぽい式。教科書はこの形式。
右端は、慣例的な表現で、「エックスバー」と読む。玄人向け。計算式を省略。
上に「-」が付いているものは、何かの平均を表す。

さて、ここで、シグマの見方を復習しておく。
Σという記号は、「足し算の繰り返し」を表す。
Σの記号の「」についてあるのが、添字の記号とその開始番号
Σの記号の「」についてあるのが、添字の最後(総数)を表している。

一回目の足し算が終わる度に、iの値が1〜nまで一つずつ繰り上がる。
そして、i=nとなったときに、足し算の計算が終了する。
その結果を総数nで割ると考えるか、総数nの逆数で掛けると考えるかで、
式の表現は異なる。ただし、結果は同じ。

エックスバー」による表現は、非常によく出てくる。
平均というのは、誰もが理解している(という前提)ので、
慣例的にこの表現を使う。説明無しに登場することも多い
この意味が解らないと、教科書の内容をサッパリ理解できない。

以上で基本的な「平均」の話は終わり。

さて、ここからは、「R」を使って平均の計算をやってみる。
今度は、「魚の卸売価格」を例に考えてみる。
私は、魚介類が好きでなのである。

まずは、コンソールを立ち上げて、データ読み込みのコマンドを入力。実行はまだ

データの読み込みは、read.table() 関数を使うのだった。

# Windows と Linux の人は次のコマンド
X <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は次のコマンド
X <- read.table(pipe("pbpaste") , sep=",", header=TRUE)

次に、今回の例で用いるデータをコピーした後、上のコマンドを実行する。

Oroshi_Kg, Taka, Naka, Yasu
Tai, 1336, 3150, 1217, 53
Chinu, 226, 630, 513, 105
Sawara, 212, 1575, 1259, 840
Yazu, 4834, 840, 315, 179
Suzuki, 618, 1575, 1146, 525
Akou, 21, 4725, 3129, 1575
Kochi, 28, 2100, 874, 210
Okoze, 28, 5250, 2635, 210
Ainame, 29, 3150, 621, 315
Hage, 1205, 1890, 383, 210
Konoshiro, 21, 2100, 1100, 105
Sayori, 12, 5250, 3916, 1260
Anago, 1637, 2625, 1721, 630
Mebaru, 330, 4200, 1680, 315
Tachiuo, 1211, 2310, 930, 105
Hamo, 1622, 3938, 592, 53
Karei, 41, 6300, 3178, 525
Hirame, 540, 2100, 1496, 210
Aji, 5149, 3150, 789, 210
Saba, 5413, 3675, 625, 53
Ika, 2414, 2888, 1083, 105
Tako, 1844, 1890, 1180, 525
Ebi, 560, 7350, 1420, 525
KurumaEbi, 222, 8925, 6508, 2625
Koiwashi, 1316, 1155, 617, 328
ObaIwashi, 2716, 499, 267, 175
Mentai, 678, 1155, 859, 394
Hamachi, 4772, 998, 632, 105
Isaki, 268, 2625, 1465, 840

このデータは多次元データになっている。
このデータにおいては、対象が魚の名前で、属性がそれぞれ、
卸売数量(Kg):Oroshi_Kg、高値:Taka、中値:Naka、安値:Yasu、
となっている。つまり、四次元のデータとして表現されていることになる。

ところで、データのことを事前に知っておくことは重要である。

このデータの出典は、広島市中央卸売市場の水産物市況(2012/08/18)から
欠損データを抜いたもの。すでに、ある程度要約されているデータである。

高値、中値、安値、というのは魚の値段のおおよその基準。
魚には大小があって、大小によって値段も、可能な調理の幅も異なる。
高値は、大きくて色々な用途に使えるもの。そして、高い。
中値は、一般的なサイズで、多くの人が目にして、買って、家庭で調理するもの。
安値は、小ぶりなもので、利用の用途が限られるようなもの。
このデータでは、(おそらく)それぞれの値の平均。詳細は不明。

この話に関しては、以下のページに解りやすい説明があった。
http://www.shonai-nippo.co.jp/square/feature/food/sf48.html

少し話が逸れたが、まずは、卸売数量の平均を求めてみる。
Rでは、mean()関数で平均を計算できる。非常に、簡単。

mean(X$Oroshi_Kg)

このコマンドでは、Xという変数の属性名を「$」記号を挟んで指定している。
あるいは、次ようにして求めることもできる。

mean(X[,1])

この表記は、Xの「1列目」という考え方で指定している。
ちなみに、大カッコ(「[ , ]」)のカンマの右側は行数左側は列数を表す。
以下は、実行結果。

> mean(X$Oroshi_Kg)
[1] 1355.276
> mean(X[,1])
[1] 1355.276

同じことを行なっているので、計算結果は同じ。これは当然。
同様に、他の変数の平均も計算してみる。

mean(X$Taka)
mean(X$Naka)
mean(X$Yasu)

以下は、上記コマンドの実行結果。

> mean(X$Taka)
[1] 3035.103
> mean(X$Naka)
[1] 1453.448
> mean(X$Yasu)
[1] 458.9655

ついでなので、以下のコマンドも実行してみる。
なお、大文字と小文字に注意すること。
Rのコマンドは大文字と小文字を区別する。

colMeans(X)

どのような結果が出てくるか?以下は実行結果。
4つの変数の平均を同時に計算できる。

> colMeans(X)
Oroshi_Kg       Taka       Naka       Yasu 
1355.2759 3035.1034 1453.4483  458.9655 

このコマンドは「列平均(Column Means)」を計算する関数であり、
colMeans()関数と呼ぶ。複雑な分析を行うようになると頻繁に登場する。
今の段階で覚えておくと良い。

今回のデータでは、全く意味は無いが、行平均(Row Means)」もある。
これは、rowMeans()関数で計算できる。
あくまで練習。これもやってみる。実行結果は以下の通り。

> rowMeans(X)
      Tai     Chinu    Sawara      Yazu    Suzuki      Akou     Kochi     Okoze 
  1439.00    368.50    971.50   1542.00    966.00   2362.50    803.00   2030.75 
   Ainame      Hage Konoshiro    Sayori     Anago    Mebaru   Tachiuo      Hamo 
  1028.75    922.00    831.50   2609.50   1653.25   1631.25   1139.00   1551.25 
    Karei    Hirame       Aji      Saba       Ika      Tako       Ebi KurumaEbi 
  2511.00   1086.50   2324.50   2441.50   1622.50   1359.75   2463.75   4570.00 
 Koiwashi ObaIwashi    Mentai   Hamachi     Isaki 
   854.00    914.25    771.50   1626.75   1299.50 

となる。各対象(魚)について、卸売数量、高値、中値、安値、の平均が出ている。
全く意味は無い。このような無意味なことはやってはいけない。

そもそも、卸売数量と、他の3つの属性は単位が異なっていて比較できないし、
高値、中値、安値というのは、各対象の何かの代表的な値であって、
しかも、中値がある意味でデータの「真ん中」を示している。
あくまで、コマンドの実行例として割りきる。

さて、今回は、「平均」というデータの真ん中について考えた。
ふむ。納得できた。だが、ここで一つの疑問が湧いてくる。
すなわち、平均以外の方法はあり得るのか?という疑問である。

なるほど。確かに、平均という考え方は的を得ているように思えるが、
何か、重大な問題を見落としているようにも思える。何が問題なのか?
この疑問については、次回に考えてみることにしよう。