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2012/08/21

文系のための「データのバラツキ」(1)

今回、少々、長い。画像やデータが多いということもある。
しかし、今回の話は、最重要。理解できないと、先に進めない。

早速、本題に入る。データの「真ん中」には、様々な定義があった。
一般的なものは、平均中央値最頻値、など。
真ん中」とは何か、を突き詰めることは面白い。
しかし、本ブログの目的は、多次元データ解析。先に進む。

さて、そもそも、データの「真ん中」の話をした理由は、
各々の対象が「真ん中」から離れている度合いを知りたいからであった。
なぜ、そのようなことを知りたいのか?

離れている度合い」によって、対象の「個性の強さを知る」ためである。
ふむ。解ったような、解らないような。では、簡単な質問をする。

対象全体としての「個性」の「バラツキ」は、大きい方が良いか?
それとも、対象全体としての「バラツキ」は、小さい方が良いか?

全体としての「バラツキ」が、小さいということは、
全体として「個性」が「無く」、観察できる視点は限定される。
したがって、答えは、「バラツキ」が大きい方。

何故、そのようなことが言えるのか、
冷静に考えてみれば、簡単に理解することができる。

例えば、教室Aに出席している100人の学生に「将来なりたい職業は?」と質問し、
100人全員が「地方公務員」と回答したとする。

そして、別の教室Bに出席している別の100人に同じ質問をして、
10人が「大学教授」、20人が「弁護士」、20人が「医者」、
30人が「公認会計士」、25人が「起業家」、残り5人が「宇宙飛行士」、
と答えたとする。個性的なクラスである。熱意と野望と夢に満ちている。
できれば、このような個性的なクラスを受け持ちたい。まぁ、良い。次に進む。

さて、教室Aは、全ての学生が「地方公務員」と答えた。夢の無いクラス。
一方、教室Bは、回答が大きく別れた。個性に溢れた夢のあるクラス。
分析対象として、興味が湧いてくるのは明らかに教室Bである。なぜなら、
  • 性別の差は存在するのか?
  • 年齢が微妙に異なっているのではないか?
  • 出身地が影響のではないか?
  • 両親の職業が関係している可能性は?
などなど。バラツキが大きい、すなわち、個性が豊かであるということは
新しい問題を発見する上で重要な手がかりとなる。
それゆえに、データ分析では「バラツキ」が重要となる。

かつて、「ゆとり教育」というものがあった。
あの政策が出てきた理由は「個性豊かたな人間を育む」とか、
たしか、そのような理由であった。評価はともかく、「理念」は間違っていない。

とにかく、分析において「バラツキ」というのは、「個性」の象徴であるので、
「バラツキ」の大きいことは良いことなのである。分析者としては。

では、いよいよ、バラツキについて本格的に考えていく。
とりあえず、平均の話で用いた「魚の卸売価格」のデータを用いて考える。
何度もやってきたので、データの読み込み方は大丈夫であろう。

# Windows と Linux の人は次のコマンド
X <- read.table("clipboard", sep=",", header=TRUE)

# Mac の人は次のコマンド
X <- read.table(pipe("pbpaste") , sep=",", header=TRUE)

以下が、そのデータ。前回のものを再掲しただけ。
データの説明に関しては、平均の話を参照。

Oroshi_Kg, Taka, Naka, Yasu
Tai, 1336, 3150, 1217, 53
Chinu, 226, 630, 513, 105
Sawara, 212, 1575, 1259, 840
Yazu, 4834, 840, 315, 179
Suzuki, 618, 1575, 1146, 525
Akou, 21, 4725, 3129, 1575
Kochi, 28, 2100, 874, 210
Okoze, 28, 5250, 2635, 210
Ainame, 29, 3150, 621, 315
Hage, 1205, 1890, 383, 210
Konoshiro, 21, 2100, 1100, 105
Sayori, 12, 5250, 3916, 1260
Anago, 1637, 2625, 1721, 630
Mebaru, 330, 4200, 1680, 315
Tachiuo, 1211, 2310, 930, 105
Hamo, 1622, 3938, 592, 53
Karei, 41, 6300, 3178, 525
Hirame, 540, 2100, 1496, 210
Aji, 5149, 3150, 789, 210
Saba, 5413, 3675, 625, 53
Ika, 2414, 2888, 1083, 105
Tako, 1844, 1890, 1180, 525
Ebi, 560, 7350, 1420, 525
KurumaEbi, 222, 8925, 6508, 2625
Koiwashi, 1316, 1155, 617, 328
ObaIwashi, 2716, 499, 267, 175
Mentai, 678, 1155, 859, 394
Hamachi, 4772, 998, 632, 105
Isaki, 268, 2625, 1465, 840

では、早速、このデータの「個性」を見てみる。
これまでの説明から、最初に、データの「真ん中」を算出し、
各対象の値からの「離れ具合」を求める。とりあえず、以下を順次実行していく。
今回は、とりあえず「平均」を「真ん中」にして考えることにする。
(実際には、中央値の方が適しているが、その議論はいずれ。)

# ステップ1:データの総数(n)を求める。
n <- nrow(X)

ステップ1は、大丈夫だろう。行数を変数nに代入しているだけ。

# ステップ2:卸売数量の平均を求める。転置が必要。
m <- t(colMeans(X))

colMeans()関数は、行列の列平均を算出してくれた。
便利であるが、数値の部分のみを取り出すには「転置」が必要。
これは、数学的な問題ではなく、Rというコンピュータ言語の仕様の問題

# ステップ3:行列の引き算ができるように、平均値を総数個複製する。
(M <- matrix(rep(m, each=n), nrow=n, ncol=4))

ここでは、新しくrep()関数が登場している。Replicate(複製する)の略。
あるスカラーの値を特定のルールに従って複製することができる。
この場合は、「each = n」つまり「それぞれの値をn回複製する」という意味。
では、変数nには何が入っていたか?確か、行数(対象数)であった。
ここでは、rep()関数は、matrix()関数の中に入っていて、行数はnとなっている。
したがって、元の行列と同じサイズの、平均値が並んだ行列が作られた。

# ステップ4:元の行列から、平均値が複製された行列Mを引き算する。
(A <- X-M)

最後のステップは簡単。単なる行列の引き算。自信が無い人は復習コース
少し複雑だったかもしれない。慣れれば、大したことは無い。

さて、最後の結果は、新しく作られた変数Aに格納されている。
この行列Aの各成分は、各対象について、平均が引かれたものになっている。
この指標が、各対象の「個性」の強さを表しているものであり、「偏差」と呼ぶ。

ここで少し数式も入れる。既にやったことを数式で表現しているにすぎない。



ここで、対象の数は 1 < i < n 個あり、変数は 1 < j < p 個ある。いつもの「np行列」。

まずは、記号の読み方。「X」の上に「」が書いてある。
読み方は「エックス・チルダ」。各成分について「列平均」を引いた行列を表す。
当然、列の数(p個の列)だけ「平均」あるので、列平均を「」のように表現する。

この行列のことを「偏差行列」と呼ぶ。偏差が並んでいる行列頻繁に登場する
元の多次元データから、各対象の「個性」だけの行列に作り替えたものである。

では、偏差行列を用いて何ができるのか?試してみる。

この状況では、少々、観察しにくいので、まずは、可視化してみる。可視化は重要。
今回は、結果を美しく見せるためにちょっとした工夫がしてある。説明は後で


# 卸売数量の可視化
plot(A$Oroshi_Kg, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Oroshi")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 高値の可視化
plot(A$Taka, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Takane")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 中値の可視化
plot(A$Naka, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Nakane")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

# 安値の可視化
plot(A$Yasu, type = "h", xaxt="n", xlab="", main="Yasune")
abline(h=0)
axis(side=1, at = (1:n), labels = rownames(A), las=2)

まずは、上記のコマンドの説明から。
基本的に、4つの図は同じ方法で作成されている。
plot()関数を使って、基本的な図を書き、
次に、abline()関数を使ってゼロを通る水平線を書いて、
最後に、axis()関数を使って軸ラベルを書いている。
各関数のパラメータを見てみる。
  • plot()関数
    • type: プロットの種類。棒で表示するので「h」。「histogram」の「h」
    • xaxt: この段階では、x軸を描画しないので「n」。「No」 の「n」
    • xlab: 今回は、x軸の軸ラベルを表示しないので空白。
    • main: 図の上に表示させるグラフタイトル。
  • abline()関数
    • h: 水平線を通る線を指定。通る場所は「0」。
  • axis()関数
    • side: ラベルを配置する場所。下に表示するので「1」を指定。
    • at: 対象のラベルを配置する位置。等間隔に「1〜総数個」。
    • labels: 実際に配置する文字列。行列Aの列名を使うので「rownames(A)」。
    • las: ラベルの向き。軸に対して垂直に置くので「2」。
Rでは、様々なパラメータによって図を整える
上記以外にも、パラメータはあるが、今回は必要なもののみ。
余裕がある人は、Rのヘルプを参照すると良い。詳しい説明がある。
例えば、axis()関数のヘルプを参照するには、
コンソール上で、「?axis()」のように、前にハテナマークを付けるだけ。

次に、結果から何を読み取れるかを考えてみる。
基本的なこととして、平均は丁度0を通る水平線となっていて、
この線よりも上に出ているのは、平均値よりも高く、
この線よりも下に出ているのは、平均値よりも低いことを示している。

とりあえず、「車海老」を観察してみる。
車海老は、卸売数量が平均を下回り、高値、中値、安値が平均よりも高い。
したがって、希少価値が高くて、全体的に価格も高いと言える。

」は、卸売数量が平均を上回り、高値、仲値、安値ともに平均以下。
つまり、希少価値は低く、全体的に安いと言える。車海老の逆の傾向

面白いのは「チヌ」。卸売数量は、平均よりも低いが、
高値、中値、安値ともに、平均よりも低い。
マダイなど、他のタイ科よりもクセがあるから、
ニーズが限られるのかもしれない

このように、平均からの離れ具合を見てやると、
それぞれの対象の個性が見えてくる。この感覚が重要である。
今回のデータから、卸売数量と価格の関係を観察したくなるが、
これは、もう少し先の話。もう少し、基礎的な話で我慢する。

さて、今回は、話が長くなる。もう少しの辛抱。
基本的な話は、時して退屈であり、また、そのような話を長々とするのも辛い。

話が逸れた。今度は、全体としての「個性」というのを考えてみる。
全体としての個性というのは、「偏差」を合わせたものと考えることができる。
すでに、「偏差」は変数Aの行列に格納されていた。
これを足しあわせてみるとどうなるか?実行する前に気づいただろうか?
Rでは、列和を次の方法で計算することができる。

colSums(A)

以下は、実行結果。

> colSums(A)
    Oroshi_Kg          Taka          Naka          Yasu
-1.818989e-12  5.002221e-12 -2.501110e-12  0.000000e+00

あれ〜?何かおかしい。若干の誤差があるが、全てが「0」となっている。
なぜか?この場合は、「平均」をデータの「真ん中」にしている。
したがって、偏差の負の側と偏差の正の側を足し合わせると、
結果として、両方を「平(たいら)に均(な)して」しまい、「0」となる。
この方法は、どうやら良くない。では、どうするべきか?

簡単な方法は、最初から、マイナスにならないようにする。
そのような方法は、これまでにやったことがあるだろうか?
思い出してみる。確か、二乗するという方法があった。これを試してみよう。

注意!これから行うのは、行列の計算ではない。行列の「成分の二乗」。

colSums(A^2)

この計算の結果は以下の通り。各列の「二乗和」が計算されている。

> colSums(A^2)
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
 78814194 117904883  49075875   8568607

コンピュータの世界では、べき乗を「^(ハット)」で表す。Rでも同様。
さて、この状況には一つ問題がある。全体の個性を表すことはできているが、
これでは、新しい対象が加わる毎に増えていき、他の状況とは比較できない
例えば、今回のデータの場合、別の日の「卸売価格」との比較ができない。

どうすれば良いのだったか?各対象の数に合致するように、
対象数の単位で基準化するのだった。つまり、対象数の逆数を掛ける。

colSums(A^2/n)

この計算結果は以下の通り。偏差の二乗の平均

> colSums(A^2/n)
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
2717730.8 4065685.6 1692271.6  295469.2

この状況も数式を使って一般化してみる。
この式の見方は、既に、平均の話でしている。省略。



σ」の記号は「シグマ」と呼ぶ。「Σ」の小文字。
二乗和であるため、二乗が付いているこれ重要

この式は、「母分散」と呼ばれる「バラツキ」の指標である。
統計学では、「母集団」と「標本」という考え方がある。
母集団というのは対象の全てであり、標本はその一部。
多くの場合、「母集団」を特定することは困難なので、
標本をとっていることになる。ふむ。そいうものであるのか。

確かに、今回のデータは、色々な意味で「全体の一部」であった。
ところで、全ての魚介類を一つの市場で扱うことは可能なことなのか?

まぁ、それは良いとして、なるほど、「標本」データである。
実は、この場合、母分散の推定値にはならないことが統計学的に証明されている。
実際の標本の分散は、母分散よりも少し大きくなる。

では、どうするべきか?そこで登場するのが「不偏分散」。
何やら、小難しい言葉が出てきた。ここは、我慢が重要。
それほど複雑ではない。以下のように式を変更する。


変更された部分は一箇所のみ。nの逆数を掛けていた部分を、n-1の逆数で掛ける。
そのような調整をしている。実際に計算してみる。

colSums(A^2/(n-1))

以下は、実行結果。

> colSums(A^2/(n-1))
Oroshi_Kg      Taka      Naka      Yasu
2814792.6 4210888.7 1752709.8  306021.7

実を言うと、R には不偏分散を計算するためのvar()関数がある。
では、上の結果とvar()関数の結果とを比較する。以下を実行。

var(X$Oroshi_Kg)
var(X$Taka)
var(X$Naka)
var(X$Yasu)

以下は、実行結果。計算誤差があるが確かに同じ。
このことから、var()関数は、不偏分散を求める関数であることが解る。

> var(X$Oroshi_Kg)
[1] 2814793
> var(X$Taka)
[1] 4210889
> var(X$Naka)
[1] 1752710
> var(X$Yasu)
[1] 306021.7

ところで、「分散」というのは、偏差の二乗の和となっている。
したがって、全体の「バラツキ」を考えると、実は、二乗分だけ多い
これは、少々、不都合なことがある。どのような不都合か?
要するに、元の値や、平均値と比較することができない、という不都合。

元に戻すにはどうすれば良いのか、というのがここでの問題。
すでに実験したように、偏差を足しても「0」となる。
そこで、分散の平方根(ルート)を取ることにする。念のため。

 であり 

平方根というのは、二乗して元に戻るような値のことで、
√(ルート)」という記号によって表したのだった。
Rでは、sqrt()関数というのが用意されているので、これを使う。

sqrt(var(X$Oroshi_Kg))
sqrt(var(X$Taka))
sqrt(var(X$Naka))
sqrt(var(X$Yasu))

そして、以下が実行結果。

> sqrt(var(X$Oroshi_Kg))
[1] 1677.734
> sqrt(var(X$Taka))
[1] 2052.045
> sqrt(var(X$Naka))
[1] 1323.899
> sqrt(var(X$Yasu))
[1] 553.1923

これが、対象数で単位を揃えた偏差の大きさとなる。
つまり、ここで計算された結果は「標準化された偏差」と言える。
一般的には、これを「標準偏差」と呼び、全体としての個性の指標としている。

実は、標準偏差に関しても、Rには関数が用意されている。sd()関数である。

sd(X$Oroshi_Kg)
sd(X$Taka)
sd(X$Naka)
sd(X$Yasu)

いつものように、実行結果を下に。確かに。不偏分散の平方根になっている。

> sd(X$Oroshi_Kg)
[1] 1677.734
> sd(X$Taka)
[1] 2052.045
> sd(X$Naka)
[1] 1323.899
> sd(X$Yasu)
[1] 553.1923

さて、標準偏差に関しても数式で表してみる。慣れが重要。
不偏分散の平方根を取るのだから、難しくはない。



今日の話は長かった。重要なことは以下の3つ。
  • 偏差:平均からの離れている程度
  • 分散:偏差の二乗の和。全体としてのバラツキの指標
  • 標準偏差:分散の平方根をとって、元のデータに合わせた指標。
この3つのことを理解できていれば次の話が解るはず。

2012/08/18

文系のための「内積」(2)

さて、行列の「掛け算」の基本的な話は済んだ。
では、「掛け算」を使うとどのようなことができるのか、
Rを使って、色々と見ていくことにする。

ここからは、多少、複雑になってくる。
自信の無い人は、Rコンソールを立ち上げて、
実際に確認しながら読んだ方が良い。読むだけだと、逆に混乱する。

今回は、図形の変換という点から見てみる。
Rコンソールを立ち上げ、以下のデータを準備する。
最初に、以下のコマンドを貼り付ける。実行はまだ

# 「足し算」の例で用いたデータの読み込み
# Windows & Linux の人は以下のコマンド
X <- as.matrix(read.table("clipboard", sep = ","))

# Mac の人は以下のコマンド
X <- as.matrix(read.table(pipe("pbpaste"), sep = ","))

以下をコピーして、貼りつけた上記のコマンドを実行
最終列に、「1」が並んでいるのは、計算の都合上のもの。
数学の魔法をかけるための準備。魔法にも準備が必要。

x,y,dummy
P1,0,0,1
P2,40,40,1
P3,40,0,1
P4,0,0,1

同様に、以下のコマンドをコピーして貼り付け。実行はまだ

T <- as.matrix(read.table("clipboard", sep = ","))

以下のデータをコピーしてから上記コマンドを実行

1,0,10
0,1,15
0,0,1

以前は、「足し算」を使って、図形の並行移動を行った。
これは、「掛け算」を使ってもできる。どういうことか?

二回目に貼り付けたデータ「Tが、変換行列になっている。
以下の行列の中で、TxとTy という変数が確認できる。
Tx の変数がx軸の移動量であり、Ty がy軸方向の移動量である。
本当にそのように都合良い行列があるのか?ふむ、ある。



手計算の場合には、少々、厄介に見えるかもしれないが、
とにかく、以下のようになる。


行列の「掛け算」では、掛けられる方を横に、
掛ける方を縦に掛け算し、足し合わせるのだった。
したがって、途中の計算は、以下のようになり、



したがって、


計算ミスをしそうだ。実際、計算ミスはよくする。
数学が苦手な人間の多くは、計算ミスによるコンプレックス
心配無用。手計算でできる事の方が少ない
だから、思い切って計算機の力を借りることにする。

R上では、以下のように計算する。

t(T %*% t(X))

そして、Xには図形データの行列が、Aには変換行列が入っている。
t()関数というのは、転置(Transpose)のことだった。

注意する点は、「掛け算」の仕方。
計算機では、一般的にアスタリスク(「*」)が「掛け算の記号」であるが、
Rの「行列の掛け算」では「%*%」とする。これが、行列の掛け算の記号である。

以上を理解した上で、このコマンドを観察してみると、
なるほど、上記の数式と同じことは誰でも理解できる。
実行すると、以下のようになる。

> t(T %*% t(X))
   [,1] [,2] [,3]
P1   10   15    1
P2   50   55    1
P3   50   15    1
P4   10   15    1

一応、重ねあわせを行なってみる。方法は、以下の通り。
plot(X, type="b", col = "blue", xlim = c(0,60), ylim = c(0, 60))
par(new=TRUE)
plot(t(T%*%t(X)), type="b",col = "red", xlim = c(0,60), ylim = c(0, 60))

行列の「掛け算」を使うと、大きさを変えることもできる。
これを、「スケーリング」と呼ぶ。これをやってみる。
平行移動と同様に、次のような変換行列を用意する。
Sx というのが、xの値のスケールなり、
Sy というのが、yの値のスケールとなる。
平行移動と同様に、この変換行列で都合よく変換できる。



では、さっそくやってみる。まずは、以下の命令後をコピーして貼り付け。

# Windows と Linux の人は以下のコマンド。
S <- as.matrix(read.table("clipboard", sep = ","))

# Mac の人は、以下のコマンド
S <- as.matrix(read.table(pipe("pbpaste"), sep = ","))

以下のデータをコピーしてから上記コマンドを実行
この例では、x軸とy軸の両方に二倍比率を変えても構わない

2,0,0
0,2,0
0,0,1

ここまでの復習も兼ねて、手計算にも挑戦すると良い。
回答は、Rの計算結果が示してくれる。



Rでの実行結果は以下の通り。以下の通りになっているかを確認。

> t(S%*%t(X))
   [,1] [,2] [,3]
P1    0    0    1
P2   80   80    1
P3   80    0    1
P4    0    0    1

さらに、プロットして、確認してみる。
plot(X, type="b", col = "blue", xlim = c(0,90), ylim = c(0, 90))
par(new=TRUE)
plot(t(S%*%t(X)), type="b",col = "red", xlim = c(0,90), ylim = c(0, 90))

最後に、「回転」もやってみよう。これも「掛け算」でできる。
ここで準備する変換行列は次の通り。



ここでは、三角関数が出てくる。ここでは、詳しいことは書かない。
とは言え、全く知らない人も居るかもしれない。基本だけ。

角度には、二種類が存在する。
1つ目は、いわゆる「度(Degree)」で、
2つ目は、「弧度(Radian)」というもの。
この2つくらいは知っておかなくてはならない。

弧度」というのは、聞きなれないかもしれないが、
要するに、半径の長さと弧の長さが等しくなる角度を1とした単位である。
数的な処理では、「」よりも「弧度」を使うことが良くある。

とにかく、次の式は記憶。記憶できなければ、いつでも参照できるように。
この変換式を使って、角度を定義する。



したがって、30度の変化を行う場合は、

> (2*pi*30)/360
[1] 0.5235988

とりあえず、コピーアンドペーストで、変換行列を作成する。
まず、「d」という変数に、「30度」を弧度に変換して格納し、
さらに、行列の元となるベクトルを作成する。

d <- (2*pi*30)/360
v <- c(cos(d),sin(d),0,-sin(d),cos(d),0,0,0,1)

そして、作成したベクトルから変換行列を作る。

R <- matrix(v, nrow=3, ncol=3)

結果として、次のような行列ができる。

> R
          [,1]       [,2] [,3]
[1,] 0.8660254 -0.5000000    0
[2,] 0.5000000  0.8660254    0
[3,] 0.0000000  0.0000000    1

これから行う変換は、次の通りである。小数点四位以下は省いてある。
小数点を長々と書く意味は無い。計算機の都合を信じてはいけない。
まぁ、良いのだが。とにかく、以下のようになる。



Rでやってみる。実行結果は以下の通り。

> t(R%*%t(X))
       [,1]     [,2] [,3]
P1  0.00000  0.00000    1
P2 14.64102 54.64102    1
P3 34.64102 20.00000    1
P4  0.00000  0.00000    1

ふむ。なるほど!数値だけ見ても良く解らない。正しいのか?
ということで、可視化してみる。

plot(t(R%*%t(X)), type="b",col = "red", xlim = c(0,60), ylim = c(0, 60))
par(new=TRUE)
plot(X, type="b", col = "blue", xlim = c(0,60), ylim = c(0, 60))

実は、これらの変換は、一般的には「アフィン変換」と呼ばれるもの。
上記の変換以外にも、「せん断」という変換もできるが、今回は省く。
ちなみに、この変換では「台形」になる変換できないので注意が必要。

この変換は、画像処理やGISにおける空間データの変換など、
様々なシーンで利用されているので、覚えておくと応用が効く。
もちろん、行列を使わずに計算することもできるが、計算ミスの危険性は増大する。
行列で計算できるのであれば、行列で計算した方が楽なのである。

2012/08/12

文系のための「内積」(1)

今回は、多少の我慢が必要かもしれない。話が少し複雑。
とは言え、ある意味、最も重要な話。先に話が進まない。

さて、まずは復習。

「行列」の「足し算」と「引き算」は、それほど難しくなかった。
要するに、同じサイズの2つの行列が存在したとして、
同じ場所にある成分同士で「足し算」するのであった。



このような、2つの行列が存在したとき、
行数」は、 であり、「列数」は、 となる。
そして、「行列X」における「不特定番目」の「成分」と、
同様に、「行列Y」における「不特定番目」の「成分」の「足し算」は、



である。つまり、同じ場所同士の成分を足しているだけ。
引き算」も同様。同じ場所同士の成分を引けば良い。
ここまでは、流石に理解できているはず。

さて、ここからが問題である。基礎編では最難関の山場
ここさえ、クリアできれば、後はかなり楽になる。

では、行列の「掛け算」というのをやってみる。
とりあえず、「3行1列」の行列と、「1行3列」の行列を用意する。

うん?、1行?? 1列?? となった人、正解。
これは、どういった、状況であるか?
イヤヨ(184)クロウハ(968)」で考える。

 

横一列の行列」とは、「横ベクトル」そのものであり、



縦一列の行列」は、「縦ベクトル」である。確かに、そのようであった。

まずは、ベクトルの掛け算から始めることにする。

さて、なぜ「行列」の「掛け算」が難しいのか?
その理由は、「足し算」と「引き算」のように、
同じ場所の成分同士を計算するわけではないからである。

掛けられる行列は「横方向」に、掛ける行列は「縦方向」に「掛けて」、
結果を「足す。という操作を必要とする。

先程の「横ベクトル」と「縦ベクトル」の計算をやってみる。



つまり、このようになる。横ベクトルでは、左から右に向かって進みながら、
縦ベクトルでは、上から下に向かって足し算をする。

折角なので、次のような例もやってみる。
イヤヨ(184)イヤヨ(184)もナントカの内」。



気づいた人もいるかもしれない。ベクトルの「掛け算」を応用すると、
同じベクトルの、転置の掛け算は、二乗して足し合わせることができる
これを「二乗和」と呼び、行列を用いた様々な演算の中で頻繁に登場する。

手計算では、有難味というのは湧かないが、
コンピュータで計算するときに重宝する。これが重要。

ところで、この例では、同じベクトルを「」と「」にしてある。
これを「転置(transpose)」と呼び、「ベクトル」と「行列」では頻繁に登場する。
また、このような計算を慣例的に次のように表す。



ベクトルの計算で、この記号が出てきたら、
つまりは、「二乗和」の計算をしている。

「横」と「縦」に計算する。なるほど、大体は理解できた。それほど難しくはない?
注意するべき点が2つある。ここからが、混乱の原因。

まず一つ目。掛けられる行列の「行数」と掛ける行列の「列数」の一致。
したがって、次のような、計算はできない。「イヤ(18)!ハシゴ(845)酒は



上から順番に計算していくと、「5」を掛ける数が無い
したがって、このような場合には計算ができない。
この約束事は、ベクトルだけでなく、「行列」にも当てはまる

そして、二つ目。掛ける順番は変えてはいけない、という原則。
スカラーでは、気にする必要は無かった。というのは、



であった。しかし、「ベクトル」や「行列」の場合は、そうは行かない。



このように、結果が「行列」となってしまい、計算結果が異なる。
したがって、「行列」においては、次のことが言える。



イヤヨ(184)クロウハ(968)」と「クロウハ(968)イヤヨ(184)
両者は、似て非なるものである。

したがって、次の場合にも注意が必要である。



両方とも、統計や数学の教科書に頻繁に登場するが、
両者は、全く異なっているのであって、混同してはいけない。念の為に、確認しておく。
  •  の場合

  •  の場合


以上が、行列の「掛け算」の導入の話。次からは、実際に「R」での計算を実践してみる。